<親善試合スウェーデン招待:日本1-0スウェーデン>◇20日(日本時間21日)◇イエーテボリ

 なでしこジャパンのエース、MF沢穂希(33=INAC神戸)が「自信」を取り戻した。後半開始から途中出場した沢は、ロンドン五輪へ「絶対結果を残してみせる」と言いきった。FIFAランク3位の日本は、FW永里優季(24=ポツダム)の1点を守りきり、スウェーデン(同4位)に勝利。この後チームは帰国し、7月2日には五輪メンバー18人が発表される。

 試合後の沢は、前日までとは別人のように自信に満ちあふれていた。北欧の白夜のもと、後半開始から笑顔を見せながら元気よくピッチに飛び出した。試合後、クールダウンをする午後9時を過ぎても、強い西日がスポットライトのように沢を照らす。3月のアルガルベ杯から約3カ月間、病気で不安だった気持ちが、45分間のプレーできれいすっきりに晴れわたった。

 沢

 この前(米国戦)よりは確実に良くなったと思う。でもまだまだ。1歩1歩です。最初からうまくいかないのは分かっていた。どんどん上げて、五輪本番でベストなコンディションに。今日出場できたことは本当にプラスになった。絶対に結果を残してみせる。大きな大会は今までやってきたし、自信もある。今までは正直、自信がなかった。自信さえ取り戻せれば、私には技術、戦術、サッカー勘がある。

 一時は「病」という初めての敵に崩壊しかけていた。「とにかく勝てて良かった。結果が出せた」。日本代表としての1勝も良薬となった。MF宮間主将からキャプテンマークを受け継いだ。昨年9月8日の五輪アジア最終予選北朝鮮戦以来、約9カ月ぶり。それもいい刺激になった。

 後半18分、鋭い読みと強い当たりで相手ボールを奪う。即座に約25メートルのスルーパスをMF川澄に供給し、決定機をつくった。終了間際にも右サイドをドリブル突破。左サイドを駆け上がった川澄に、約30メートルのピンポイントクロスを通し、川澄はダイレクトで狙った。沢の視野の広さと、川澄の運動量がぴったりシンクロしていた。

 川澄も「サイドチェンジを速くすることでチャンスができた。そこから足元に入れば細かいパスもつなげる。五輪までに仕上げていくことが分かった」とにんまり。沢-川澄のホットラインが攻撃のお手本を見せれば、スウェーデンの猛反撃を断ち切ったのも、沢のフィジカルの強さ。危険な時間帯で、身をていしてヘディングで大きくクリアし、味方に安心感をもたらす。ボール奪取能力、危険察知能力。大黒柱の存在感が際立った。

 沢はチームとしての復活も断言した。「今は18人の発表前でサバイバルがある。みんな体が重いのはそのプレッシャーもあるから。本当にチームが1つになるのは(五輪)メンバーが発表されてからじゃないかな」。

 残る課題はこの日も目立った単純パスミス。「日本が研究されているのをすごく感じる」と、日本が嫌がるハイプレッシャーを米国もスウェーデンも体格差を生かして実行してきた。「こっちもそこを分析して、当たられる前にパスを出すなど判断力を速くしないとダメ」とミスへの改善策も明確だ。

 ヘディングを繰り返し、首にはアイシング。右太もも打撲で、少し足を引きずりバスへ。だが、その表情は明るい。北欧の白夜、沢はみなぎる自信をその両手に取り戻していた。【鎌田直秀】