川崎フロンターレが史上最速Vを決めた。2位G大阪との直接対決を5-0で圧勝し、4試合を残し2年ぶり3度目の優勝を飾った。今季は新型コロナウイルスの影響でリーグ戦が開幕直後から約4カ月も中断。見えざる敵の脅威の中、鬼木達監督(46)を中心に結束を深め、攻撃的な新システム4-3-3を進化。J1新記録の12連勝を含む2度の大型連勝で独走し、新型コロナ禍に大黒柱のMF中村憲剛(40)の引退発表など特別なシーズンを、わずか3敗で制した。

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シャーレを掲げたのは、MF中村だった。後半41分から出場すると、キャプテンマークを大島から託され「憎いことをするなと思った。ちょっと泣きそうになった」と照れた表情を浮かべた。試合後は大島からシャーレを受け取り、サポーターの手拍子に合わせて、高く掲げた。3度目の光景だが、今年は一味違う。「最高以外の言葉が浮かばない。初優勝とは違う光景。1年の成果が反映された、フロンターレらしい優勝ができた」。今季を象徴する試合で、最速Vを飾った。

ドラマチックなラストシーズンだ。19年11月の大けがから「なんとしても復帰した姿を見せて引退するんだ」と、厳しいリハビリに耐えてきた。復帰戦でゴール、自らの誕生日にもゴールを決め、この日は主将DF谷口の出場停止が重なり、最初にシャーレを掲げた。「こんな幸せな40歳でいいのかと思っています」。セレモニーでは“金のバスタブ”で優勝に浸った。

「憲剛さんのためではなく、憲剛さんと一緒に」。中村の引退発表後、選手は口をそろえた。チーム一筋18年、背中でもプレーでも言葉でもチームを引っ張るアイコンだった。MF三笘が「フロンターレでプロになりたいと思わせてくれた選手の1人」と言えば、MF田中は「スタジアム全体をホームにするプレーができる選手は憲剛さんしかいない」と、存在の大きさを例える。

中村のいない間チームを引っ張ったのは、その若手たちだった。「後輩が強いフロンターレを見せてくれて、乗っかるだけだった。心おきなく先に進みたいなと、あらためて思いました」と中村。リーグのタイトルを手に、天皇杯に挑む。【杉山理紗】