先日、本紙評論家のセルジオ越後さんと、長時間話す機会があった。「日本人選手が欧州で活躍できなくなった現状がとても残念で寂しいね」と言われた。その通り。現在、欧州でプレーする日本人選手は約50人。その中で、レギュラーとして助っ人の役割を果たしているのは、ほんの一握りだ。

その数少ない選手の共通点は、中堅以下のクラブか、ビッグ4と言われるプレミアリーグ、スペインリーグ、ブンデスリーガ、セリエAではないリーグに所属していることだ。しかも注目される攻撃的なポジションよりは、ボローニャDF冨安健洋、マルセイユDF酒井宏樹、シュツットガルトMF遠藤航、フランクフルトMF長谷部誠らボランチ以下のポジションの選手が比較的に評価が高い。

世界サッカー界をリードする欧州リーグは昨季からコロナ禍もあり、EU圏外からの移籍が減少した。セルジオさんから「あるエージェントから聞いたけれど“今、アジア市場では日本人より韓国人選手の方が好まれる”と言われた。(トットナム所属)ソン・フンミン(孫興民)が大きいね」と言われた。プレミアリーグでリバプールFWサラらと得点王を争う、韓国代表FW。私もその1カ月前に、他の関係者からまったく同じことを聞いている。

欧州でプレーした日本人選手の中には、中田英寿をはじめ、中村俊輔、香川真司、本田圭佑ら結果を残した選手は多い。しかしビッグクラブに移籍してからもレギュラーでプレーし続けた選手はいない。ビッグクラブでレギュラーとしてプレーしたのは、インテルDF長友佑都くらいか。こちらも守備的なポジションだ。

現在、欧州組の半数以上は、2列目以上の攻撃的なポジションの選手。今後、欧州の移籍市場で日本人の価値が上がるかは、彼らの活躍に左右される。せっかくのチャンスを得たリバプールFW南野拓実、ステップアップのチャンスは1度逃したものの、ヘタフェでやり直す道を選んだMF久保建英ら、化ける可能性を秘めた素材は何人もいる。

自分のため、家族のため、日本のため。それぞれモチベーションは異なるかもしれないが、成功したい気持ちは変わらないはず。これからは、頑張るきっかけに「欧州行きを目指す後輩、サッカー少年のため」を加えてほしい。自分たちが残した足跡が、のちに欧州組を夢見る子供たちにも影響することもあるから。【盧載鎭】