山梨学院大サッカー部男子が、来季の関東大学リーグ2部昇格を決めた。今季の東京都リーグ1部を制し、12チームで争った関東大学サッカー大会(10月29日~11月26日)でもA組1位となった。

2005年(平17)に赴任した横森巧総監督(80)が地盤をつくり、09年に東京都3部からスタート。近年は足踏みが続いたが14年目で関東の扉を開いた。

大学サッカーを熟知する岩渕弘幹監督(56)に率いられ、群雄割拠の戦国・関東でも持ち前の速い攻撃で真っ向勝負を挑む。

東京都リーグ1部V

関東大学リーグ2部昇格を懸けた最終5試合。山梨学院大は、地元甲斐の戦国武将、武田信玄(1521~73年)が掲げた「風林火山」のごとく強敵を次々と打ち破っていった。

持ち前の走力を武器にエースFW平河悠(4年=佐賀東)が、司令塔のMF若谷拓海(4年=埼玉・西武台)が、敵陣に切り込んでいく。そこへ何人もの選手が動きを合わせた。まさに一気呵成(かせい)。その攻撃の迫力こそが、関東への扉をこじ開けるカギとなった。

昇格が決まり、胴上げされる岩渕監督
昇格が決まり、胴上げされる岩渕監督

関東大会では専大、神奈川大と同じA組だった。「下馬評はこの2チームと言われ、なにくそというのがあった」と岩渕監督。第1戦で東京経大を退けると、第2戦の神奈川大がヤマ場だった。「すごい気持ちの出た試合。うちの選手は頼もしかった」(同監督)。攻守に凌駕(りょうが)し、2-0と完勝した。

1人、1人を比較すれば相手が上かもしれない。だが「チームで点を取るぞって時に、その瞬間は爆発的な力を出す」と横森総監督。古代中国「孫子」の兵法(ひょうほう)書から用いたとされる風林火山。「その疾(はや)きこと風のごとく…」。過酷な5試合を疾風のように戦った。

2部昇格を決めたチームについて語る横森総監督
2部昇格を決めたチームについて語る横森総監督

岩渕監督就任4年目で、現4年生とは「同期」だ。川崎Fユース監督を経て15年も指導した専大では、11~14年には関東リーグ1部を4連覇するなど、大学サッカーを熟知する。上から押し付けることなく選手と同じ目線で対話し、おのおのに考えさせた。専大と同じくトップチームの練習時間は朝に変え、早く就寝するなど生活習慣も整えた。

2025年の甲府加入が内定したDF一瀬
2025年の甲府加入が内定したDF一瀬

素早い攻守の切り替えから縦に速いスタイルに磨きをかけた。「努力できる子がそろった」(同監督)のも大きかった。大雨でも自主練習に励むほどのサッカー好きばかり。1年目から年間50をゆうに超える実戦をこなした。3年目で関東地区代表となり総理大臣杯に初出場。いきなり全国3位に輝き、自信は確信となった。

今季は東京都1部22試合で勝ち点52(17勝1分け4敗)と圧勝し、その勢いのまま関東大会も快進撃を続けた。若谷は「総合力の勝利。平河が抜けても他の選手が活躍する。5試合とも同じメンバーで戦っていない」と胸を張る。

北九州加入が内定したMF若谷
北九州加入が内定したMF若谷

ステージが1つ上がり、来年の関東2部は厳しい戦いが予想される。それだけに岩渕監督は「そこで降格しないよう、3年我慢できるか。それができれば次が見えてくる」。石の上にも3年-。まずは着実な1歩を刻むことから始める。

信玄公ゆかりの地から大学サッカーの頂点へ、山梨学院大が新たな挑戦に踏み出した。【佐藤隆志】

若谷、一瀬ら4選手がJ内定

山梨学院大から今年は4人のJリーグ内定選手が出た。中でも注目は2年生ながら25年の甲府入りが内定しているDF一瀬大樹。山梨学院高3年で全国選手権を制して日本一に輝き、日本高校選抜にも入った。186センチの長身センターバックで空中戦の強さが売りだ。19年にJ1で得点王とMVPを獲得した仲川輝人(横浜)を専大時代に指導した岩渕監督も「モノがいい」と才能に太鼓判を押す。


甲府はJ2ながら今年の天皇杯を制し、来年のアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)の出場権を持つ。入団は25年だが、来年から特別指定選手としてプレーできるとあって一瀬は「プロ基準からすれば足りないこともあるが、空中戦は負けたくない。ACLは楽しみ」。この2年で周囲への声掛けを意識し、ラインコントロールのうまさも加わった。成長著しい若武者はさらなる飛躍を誓う。

リーグ戦に出場したJリーグ加入内定選手

【4年】若谷 拓海(わかや・たくみ)

■ギラヴァンツ北九州

■ポジション MF

■生年月日 2001年4月1日

■身長/体重 170cm/62kg

■出身地 埼玉県

■所属  FC FESTA U12-FC FESTA U15-西武台高-山梨学院大


【4年】平河 悠(ひらかわ・ゆう)

■FC町田ゼルビア

■ポジション FW

■生年月日 2001年1月3日

■出身地 佐賀県

■身長/体重 171cm/68㎏

■所属 明倫JSC-FCレヴォーナ-佐賀東高-山梨学院大


【4年】吉田 泰授(よしだ・たいじゅ)

■モンテディオ山形 

■ポジション DF

■生年月日 2000年4月21日

■出身地 福島県

■身長/体重 174cm/67kg

■所属 赤木サッカースポーツ少年団-ラッセル郡山-尚志高校-山梨学院大


【2年】一瀬 大寿(いちのせ・たいじゅ)

■ヴァンフォーレ甲府

■ポジション DF

■生年月日 2002年9月27日

■出身地 山梨県

■身長/体重 186cm/75kg

■経歴 羽黒SSS-甲府U-15-山梨学院高-山梨学院大


23年から3部新設 計36チーム

◆関東大学サッカーリーグ 22年度で96回を数えた関東のトップリーグ。春から秋にかけて2回戦総当たりのリーグ戦を行っている。これまで2部構成だったが、関東大学サッカー連盟は、今年3月16日に「関東地域の大学サッカーのさらなる発展を目的」に、23年度より3部を新設してのリーグ再編を発表。今季の成績をもとに、都県リーグからの昇格チームも加え、来季は1部12チーム、2部12チーム、3部12チームの合計36チームで実施される。


新サッカー場が来夏完成

来年夏には新たなサッカー場が完成する。人工芝コート2面に加え、屋内トレーニング施設を設置し、その上には観戦スタンドが付くという豪華な施設だ。横森総監督は「学校に覚悟がある。地域に与える影響が大きく、強化してもいいと思ってくれた」と感謝する。山梨学院の高校はインターハイ1回、選手権2回を制し、3度の日本一。大学も日本一へ本気だ。


天皇杯5回出場

◆山梨学院大サッカー部男子 05年に横森総監督が赴任し、サッカー部強化に着手。「強化育成クラブ」となった初年度の09年、東京都3部で優勝。10年に同2部優勝、13年に同1部で初優勝。同1部では優勝4回。21年には関東代表で総理大臣杯全日本大学サッカートーナメントに初出場し、3位に輝く。天皇杯にも山梨県代表として5回出場。部員160人が4つのカテゴリーのチームに分かれて活動。チームスローガンは「攻めて勝つ!」。拠点は和戸富士見サッカー場(山梨県甲府市和戸町814の4)。専用のクラブハウスを持ち、トレーニングルームも充実。