高校サッカーの名将がJリーグデビューを果たした。青森山田高を7度の全国優勝に導いた黒田剛監督(52)が今季から指揮を執る町田が、開幕戦で仙台に0-0で引き分けた。昨年のW杯カタール大会にも出場したオーストラリア代表FWミッチェル・デューク(32)らを中心に、決定機を何度も創出。記念の白星は次戦へ持ち越しとなったが、価値ある最初の勝ち点1を手にした。

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舞台は変わっても、堂々と指揮を執る姿は変わらない。最後まで勝利を求めた選手たちを、黒田監督は力強いハイタッチで迎え入れた。「緊張することなく自然体で今日を迎えられました」。青森山田の監督として7度の全国制覇。数万人が入った国立や埼スタを何度も経験したが、空気の違いはすぐに感じ取った。「やはり(高校)選手権とは相当違う。ファン、サポーターの重み、熱がひしひしと伝わってくる。これがプロの世界なんだなと改めて感じました」。

約30年携わった高校サッカーを離れ、52歳で新たな挑戦。「高校の時とは少し変えようかなと」。慣れ親しんだジャージー姿から、ジャケットに勝負服を着替えた。これまでは接することの少なかった外国人選手にも指示を出す。「片言の英語でもしゃべったほうがいいかなと思った」。ピッチサイドでは通訳を通さず、直接のコミュニケーションを大切にした。

追い求める理想はJリーグでも変わらない。高校生たちに「被シュート0」を求めたように、キャンプではまず堅い守備を落とし込んだ。「勝つイコール守れること。失点0で行けたのは我々のゲームプランの1つ。そこは評価したい」。これまで強みにしてきたロングスローも作戦の1つ。後半44分には、MF翁長が投げ込んだボールから決定機につながった。「武器の1つ。やはりプロは身長が高いですし、なかなかうまくいかないが、投げるポイントを含めもう少し工夫したい」。たどり着きたいのは「何でもできるサッカー」。青森山田で培った最強スタイルを、プロの世界でさらに進化させる。

異例の転身は始まったばかり。「勝ち点1を獲得できたことをポジティブに捉えて、次の試合に臨みたい」。新たな舞台でも頂点を目指すだけだ。【磯綾乃】

▼町田主将DF奥山 (黒田監督は)「細かいところを見られていて、負けず嫌い。こだわりが強い監督。その基準に僕たちが合わせていけるようになれば、レベルアップにつながると思う」

◆黒田剛(くろだ・ごう)1970年(昭45)5月26日生まれ、札幌市出身。登別大谷(現北海道大谷室蘭)-大体大。94年、青森山田のコーチに就任し、95年から監督を務め、23年、J2町田監督に就任。全国高校総体は05、21年優勝。全国高校選手権は16、18、21年度優勝。プレミアリーグEASTは16、19、21年、同ファイナル(旧チャンピオンシップ)は16、19年優勝。尊敬する人物は、元日本代表監督・岡田武史氏。家族は夫人と1男1女。血液型O。