22年W杯カタール大会開幕戦の開始早々から、いきなり新システムが試合の重要な場面で作動した。前半2分38秒、エクアドルFWバレンシアが先制ゴールを決めたかに見えたが、ビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)の介入で取り消しとなった。威力を発揮したのがVARのオフサイド判定を補助するために導入された「セミ・オートメーテッド・オフサイド・テクノロジー」。肉眼では確認が難しい判定をわずか数秒で導き出した。試合はエクアドルが2-0で開催国カタールに快勝した。

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試合開始2分38秒。FKの流れからエクアドルのバレンシアがヘディングでネットを揺らした。しかしイタリア人のオルサト主審は口元のマイクでVAR担当審判と少し言葉を交わし、“ゴール”から28秒後には右手を上げて「オフサイド」の判定を下していた。

これまでのVARよりも格段に結果が出るのが速く、しかも一見、誰がオフサイドポジションにいたのか分かりづらいプレー。そのためネット上には「いきなり中東の笛か」などとカタール有利の判定をやゆするコメントが殺到した。

しかし映像で確認すると確かにオフサイド。センターサークル付近からのFKに対し、攻め上がったエクアドルDFトレスがGKと競ってヘディング。これを横にいたFWエストラダが拾うのだが、トレスがヘディングした際、エストラダの右足がわずかにオフサイドラインの選手より前に出ていた。

この時GKは飛び出していたため、オフサイドラインはゴールラインとの距離が2番目に近いカタールのフィールドプレーヤー。肉眼では分かりづらいが、新システムではいとも簡単にオフサイドだと導きだされた。ネット上には一転、「中東の笛やと思ってた自分をぶん殴りたい」などと“反省”のコメントも躍った。

エクアドルのアルファロ監督は「スタッフは映像を5度見たが、ゴールだと言っていた。エストラダは足の爪をどうにかすべきだ」と、冗談めかした表現で厳密な判定に言及した。この新システムでは、公式球「アルリフラ」の中心にチップが埋め込まれ、スタジアムに設置された12台の高性能カメラが選手1人1人の位置を正確に把握し、人工知能(AI)がオフサイドかどうか判断する。多くの“最新鋭”が取り入れられているW杯カタール大会で、いきなりそのテクノロジーが人々の注目を集めた。

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