昨年の東京五輪でも失言で役職を失った方がいたが、国際サッカー連盟(FIFA)のジャンニ・インファンティノ会長(51)も不適切な発言で批判を浴びている。

英BBC電子版によると、2年ごとのワールドカップ(W杯)開催を推進している同会長は最近の演説の中で「我々はより多くの(W杯出場の)機会を与える必要がある」「チャリティーなどをするよりも、世界のその他多くの地域の人々に(W杯に)参加する機会を与えたい。アフリカの人々にも希望を与える必要がある。そうすれば彼らは良い生活を求めて地中海を渡ろうとしないで済むし、多くの人が亡くならないで済む」などと発言。各方面から大きな反発を招いた。

「missing migrant project」という国際団体によると14年以降、2万3000人以上の人々が新天地を求めて地中海を渡ろうとし、その結果、行方不明になっているという。

インファンティノ会長の発言には大まかに2つの問題点があると思う。1つは2年ごとのW杯開催を実現するために(自分たちの利益のために)、直接には何の関係もない地中海での行方不明者の問題を持ち出したこと。もう1つは、アフリカの人々には希望がないというような“上から目線”のコメントだったということだ。

インファンティノ会長は批判を受けた後「はっきりさせたいのは私の演説でのスピーチはもっと一般的なものだということ。我々には世界中の状況を改善するための手助けをする責任があるという意味だ」と釈明。それでも「Human Rights Watch」の広報担当者は「我々の職員が毎日、世界中の難民から話を聞いているが、W杯の開催時期について言及している人は1人もいない」とあきれているという。

もちろん世界中の難民問題や貧困問題はできるだけ早く解決されるべきだと思う。だが、それに向けてFIFAがやるべきなのは2年ごとのW杯開催ではない。インファンティノ会長は「チャリティーではなく…」と言っているが、現実的にはできるだけ多くのチャリティー活動を行うことが、まずは一番大事なのではないだろうか。それだけの収益も上げているのだから。

個人的な意見だが、同会長の発言に代表されるように欧州の人間が無意識であってもアフリカやアジアを下に見ることはままあると思う。欧州が世界の中心のサッカー界ではその傾向がより強い。まずはそういう意識をなくすことが世界中の人々がうまくやる第1歩だろう。

【千葉修宏】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「海外サッカーよもやま話」)