今季のスペインリーグも早いもので、あと2節で全日程が終了する。例年に比べてさまざまな争いが白熱し、全ての結果が最終節までもつれ込む可能性が非常に高い状況になっている。

優勝の可能性があるのは首位アトレチコ・マドリード(勝ち点80)、2位レアル・マドリード(勝ち点78)、3位バルセロナ(勝ち点76)の3チーム。しかしバルセロナはクーマン監督やピケ、ブスケツから優勝の可能性が非常に低い旨の発言が出ており、実質的に上位2チームに絞られたと言えるかもしれない。

今季はタイトな日程によるケガや新型コロナウイルス感染などにより、おそらくどのチームも望んだようなパフォーマンスを発揮できていない。そのため勝ち点の伸びが悪くなっており、優勝チームの最終的な勝ち点数は、ここ10年間で最低になることが確実となっている。近年、優勝チームで最も総勝ち点数が少なかったのは、2018-19シーズンのバルセロナと昨季のRマドリードでともに勝ち点87だったが、今季はそれを下回る。

また近年、こんなにもギリギリまで4チームが優勝争いに絡んだことはなく、1位から4位の間の勝ち点差が10だった06-07シーズン以来のこととなっている。今季残り5節まで、首位Aマドリードと4位セビリアの勝ち点差はわずか3。しかしセビリアが第34節でビルバオに敗れ、第35節でRマドリードと引き分けたことで最初に優勝争いから脱落すると、バルセロナは第35節でAマドリード、第36節でレバンテ相手に連続で引き分け、2季ぶりの優勝の可能性がほぼ消滅している。

勝ち点80で首位のAマドリードが次の第37節でオサスナに勝利し、Rマドリードがビルバオ相手に引き分け以下の結果に終わった場合、最終節を待たずに7季ぶりの優勝を達成する。またオサスナとバリャドリードに連勝した場合、Rマドリードの結果に関係なく、無条件で優勝を成し遂げることができる。

一方、勝ち点78で2位のRマドリードは最終的にAマドリードと勝ち点で並んだ場合、またはAマドリード、バルセロナと3チームが勝ち点で並んだ場合、ともに直接対決の結果によりRマドリードが2連覇を達成する。

来季の欧州チャンピオンズリーグ(CL)出場は上記4チームで決定済みだが、頓挫した欧州スーパーリーグ創設プロジェクトから撤退していないRマドリードとバルセロナに、欧州サッカー連盟(UEFA)から2年間の出場停止処分が下る可能性があるという。

来季の欧州リーグ(5位)および新設される予定の欧州カンファレンスリーグ(6位)の出場権争いは、5位レアル・ソシエダード(勝ち点56)、6位ベティス(勝ち点55)、7位ビリャレアル(勝ち点55)、8位セルタ(勝ち点50)に絞られている。

しかしビリャレアルは今月26日にグダニスク(ポーランド)で開催される欧州リーグ決勝でマンチェスター・ユナイテッドに勝利した場合、来季の欧州CLの出場権を獲得する。

残留争いには日本人選手所属3クラブが全て含まれている。15位アラベス(勝ち点35)、16位ヘタフェ(勝ち点34)、17位ウエスカ(勝ち点33)、18位バリャドリード、19位エルチェ(勝ち点30)、20位エイバル(勝ち点30)の6チームが残り3枠をめぐり争うことになる。

まだ2節残されており、さまざまな要素がある中、日本人選手所属クラブの状況をみてみると、久保建英が所属するヘタフェはレバンテ、グラナダ相手に2連勝した場合、無条件で残留を決定する。しかし現在、4試合連続無得点および4戦連続未勝利、そして3連敗中、ここ11試合でわずか1勝と、チーム状態は非常に悪い。

その状況下、次の第37節でヘタフェがレバンテに勝利し、ウエスカもしくはバリャドリードが引き分け以下に終わった場合、最終節を待たずに残留を達成できる。またレバンテ戦に引き分けた場合も、バリャドリードが敗れ、エルチェとエイバルが引き分け以下に終われば1節を残して残留を決められる。

岡崎慎司が所属するウエスカはここ3試合で2勝と調子を上げており、前節ビルバオ戦に勝利したことで降格圏から脱出した。残り2節、ベティス、バレンシアに連勝した場合、無条件で残留の権利を勝ち取ることができる。

また第37節でベティスに勝利し、下の順位のバリャドリード、エルチェ、エイバルの3チームがそろって引き分け以下に終わった場合、最終節前に残留を決めることができる。

乾貴士と武藤嘉紀が所属するエイバルは16戦未勝利が続いた後、ここ3試合で2勝1分けという好成績を成し遂げ、急激な追い上げを見せているものの、最下位という状況は変わらない。

バレンシア、バルセロナとの対戦を控える中、現時点でエイバルに自力で残留を決める可能性はなく、残留争いのライバルたちがつまづくのを待つ必要がある。

このように多くのチームが何らかの目標を抱えているため、最終節まで目が離せない展開になる可能性が非常に高そうだ。

【高橋智行通信員】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「スペイン発サッカー紀行」)