「全てのマドリディスタ(レアル・マドリードサポーター)にとって明日は特別な日となる」

スペインリーグ第4節セルタ戦前日、アンチェロッティ監督がこう語ったように、9月12日はRマドリードを愛する世界中の人々にとって特別な1日となった。

それまで、Rマドリードが最後にサンティアゴ・ベルナベウで戦ったのは昨年3月1日のクラシコだった。しかしその2週間後、新型コロナウイルスの感染拡大による未曽有の事態に陥ったことにより全ての大会が中断された。3カ月後に再開したが、クラブ首脳陣は無観客開催というマイナス要素を生かし、19年夏に周辺地区の再編計画とともにスタートしたサンティアゴ・ベルナベウの大規模な改修工事の促進を決断。これにより昨季終了までの約1年間、計31試合(スペインリーグ25試合、欧州チャンピオンズリーグ6試合)をBチームのカスティージャのホームスタジアムであるアルフレド・ディ・ステファノで戦ってきた。

そして迎えた9月12日、改修工事が続く中、マドリディスタの聖地サンティアゴ・ベルナベウで1年半ぶりの公式戦が有観客で開催された。スタジアム本来のキャパシティーは8万1044人だが、マドリード州の新型コロナウイルスの衛生規則による入場制限があり、客入りは約2万人と非常に少なかった。

それでも南ゴール裏2階席コーナー付近に陣取った白い衣装を纏った応援団が、試合中ずっとチャントを歌い続け、スタンドの観衆は選手たちに熱い声援を送り、相手や審判団に容赦ないブーイングを浴びせ、新型コロナウイルス感染拡大前のいつもの光景がサンティアゴ・ベルナベウに戻っていた。

試合前には、新型コロナウイルス感染により死去したRマドリード元会長ロレンソ・サンス氏ならびにコロナ禍で亡くなった世界中のマドリディスタの追悼式が厳かに行われた。一方で試合はベンゼマのハットトリックやRマドリードでのデビューを果たしたカマビンガの初得点もあり、5-2の逆転勝利でお祭りムード。この日を待ちわびていた全てのマドリディスタのさまざまな感情が激しく揺さぶられるものとなった。

アンチェロッティ監督は試合後、「我々は素晴らしい雰囲気の中、特別なスタジアムでプレーすることができた」と感想を述べると、ベンゼマも「今日はサポーターの雰囲気のおかげで僕たちにとって特別な夜になった」とスタンドに観衆が戻ったことを喜んだ。

サンティアゴ・ベルナベウでの戦いが再開した中、今季はベンゼマが例年以上に高い得点力を発揮し、現在5ゴールを決め、スペインリーグの得点ランキングトップに立ち、キャリア初のピチチ賞(スペインリーグの得点王)に向けて前進している。

さらにビニシウスにも注目が集まる。ブラジル代表FWはRマドリード初年度の18-19シーズン、合計87本のシュートを打ちながらわずか4得点。1ゴールを決めるのに22本ものシュートを必要としていた。一方、4年目の今季はゴール前で冷静さを身につけ、ここまで1試合平均1得点とゴールを量産。合計8本のシュートで4得点、2本に1本の割合でゴールを決め、非常に高い決定力を示しており、大いに楽しみな存在となっている。

Rマドリードは今後も改修工事を継続しながら、サンティアゴ・ベルナベウを本拠地としてホームゲームを戦っていく。20世紀最高のクラブ(国際サッカー連盟が認定)の“未来のスタジアム”の完成予定は来年12月。クラブ首脳陣は1947年12月14日のサンティアゴ・ベルナベウ開場からちょうど75周年目にあたる2022年12月14日に正式なオープニングセレモニーを計画しているとのことだ。

その頃には新型コロナウイルスが収束し、世界中のマドリディスタが“21世紀のサンティアゴ・ベルナベウ”に何の障害もなく駆けつけられることを願いたい。

【高橋智行通信員】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「スペイン発サッカー紀行」)

改修工事が行われるサンティアゴ・ベルナベウ」の外観
改修工事が行われるサンティアゴ・ベルナベウ」の外観