バルセロナは今季、依然として続く財政難によるサラリーキャップ(選手の契約年数に合わせて分割された移籍金や選手年俸などの限度額)の問題を解決すべく、チームを大幅にリニューアルした。
■移籍金を払ったのはロメウのみ
今夏、ブスケツ、ジョルディ・アルバといった重鎮やデンベレ、ケシエなどが完全移籍、アンス・ファティやエリック・ガルシアなどが期限付き移籍でチームを離れた一方、ジョアン・フェリックス、カンセロ、ギュンドアン、オリオール・ロメウ、イニゴ・マルティネスを獲得。ほぼ全員が即戦力にもかかわらず、移籍金を支払ったのはオリオール・ロメウの350万ユーロ(約5億4250万円)のみと非常に効果的な補強を実現させた。
このようなメンバーでスタートしたバルセロナは、テア・シュテーゲンがクラブ史上クリーンシート最多記録(26回)を樹立した昨季の鉄壁な守備を武器にスペインリーグを制したチームから、本来クラブが望む形に近い得点力を高めたチームへと変貌している。
シーズン序盤から複数の主力選手にケガ人が出ながらも成功を収めている要因として、現地では偽の左ウイングとしてプレーするジョアン・フェリックスや攻撃的サイドバックのカンセロといった新戦力が即座にチームにフィットしたこと、昨季のスペインリーグ得点王レバンドフスキが5得点3アシストと復調し、ラフィーニャが調子を上げ、昨季控えに甘んじたフェラン・トレースがベストの状態を取り戻したこと、そして16歳の新星ヤマルが右サイドで存在感を発揮していることなどが挙げられている。その結果、ここまでの公式戦9試合で24得点、1試合平均2・67得点という高い得点力を発揮している。
■昨季よりアップ1試合平均2・38得点
スペインリーグに目を向けると、1試合平均得点は昨季が1・84得点(38試合70得点)だったのに対し、今季ここまで2・38得点(8試合19得点)と増えている。このように得点を高めつつ6勝2分けと唯一の無敗チームになっているため、新たなメンバーを加えたチーム作りは順調にいっているように見える。
しかし、クリーンシートはまだ4回のみと昨季に比べ守備の安定感を欠き、楽に勝てている試合はほとんどない。その原因として個人的なミスや集中力の欠如、そして攻撃に比重を置き過ぎ、特にカンセロが高い位置でプレーしていることでDFラインのバランスが崩れていることなどが現地メディアに指摘されている。
■1試合平均1失点と昨季から倍増
今季のスペインリーグでの守備の脆さは、昨季の1試合平均が0・53失点(38試合20失点)だったのに対し、今季は1・00失点(8試合8失点)と倍増していること、そして昨季、8失点に達したのが第23節だったことからも分かる。
快勝は5-0のベティス戦のみ。それ以外はほぼ全ての試合でなんらかの苦しみを味わい、特にここ3試合はそれが顕著となっている。セルタ戦は2点奪われた後、終盤の怒涛のゴールラッシュで3-2という奇跡的な逆転勝利を達成。マジョルカ戦は2回リードされた後になんとか2-2の同点に追いついたが、ジローナに首位の座を明け渡す結果となった。また直近のセビージャ戦は18本ものシュートを打ちながら決定力不足を露呈し、セルヒオ・ラモスのオウンゴールにより1-0で辛勝した。
■「集中力を高める必要がある」
シャビ監督は失点数の増えている現状について、「単発的なミスがあるためもっと集中力を高める必要がある。その点を改善しなければいけない。それが我々の弱点だと思う。勝てるチャンスを作れているが、失点が多すぎる」と反省していた。
相手に引かれてしまい、ゴールを決めるのに苦労することは度々あるが、それでも攻撃力はかつての姿を取り戻しつつある。そのため守備の改善こそが、スペインリーグ2連覇及び、欧州チャンピオンズリーグでの2季連続グループリーグ敗退という失態を払拭する鍵となるだろう。
【高橋智行通信員】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「スペイン発サッカー紀行」)