日本代表MF久保建英(23)の24年が間もなく終わりを迎える。

年初めのアジアカップ参加後、疲労の蓄積がフィジカルコンディションの低下につながり、最終的に不本意な形で昨季を終えていた。そして心機一転して臨んだ今季、チームがいきなり不調に陥った影響をもろに受け、出だしは断続的にしか活躍できない。

さらに開幕2戦目のエスパニョール戦で途中出場から得点を決めた後、ベンチスタートに異を唱えるかのような物議を醸すゴールパフォーマンスは、監督との関係に不安を募らせるものとなった。

しかし、それはもはや過去の話。シーズン開幕から4カ月が経過した今、久保は「プレーで違いを作り出し、決定的な役割を果たす」という、本来あるべき姿に戻りつつある。

■プレシーズン多忙が影響

レアル・ソシエダードは今季開幕後、大きく躓いて公式戦8試合でわずか1勝しか挙げられなかった。特にレアレ・アレーナでの成績は散々で、開幕からのホーム3試合におけるクラブ史上ワーストの3連敗を喫していた。

昨季欧州チャンピオンズリーグ(CL)にまで上り詰めたチームはなぜこのような事態に陥ったのか? 現地ではその原因を探るため、さまざまな議論が交わされた。その結果、主な理由として欧州選手権、南米選手権、パリ五輪に多くの選手を輩出し、プレシーズンをまともに送れなかったことが挙げられた。

さらに、スポンサーの影響で5月に続き、わずか2カ月後に2回目の日本ツアー(ガンバ大阪と対戦)が実施されたことも原因のひとつと考えられた。アルグアシル監督はクラブの事情に理解を示しながらも、予定されていたフランスでのテストマッチをキャンセルし、極東への移動を余儀なくされたことに不快感を示していた。

メンバー確定に時間がかかったことも大きな理由だろう。今夏放出した主力のル・ノルマン(アトレチコ・マドリード)とミケル・メリーノ(アーセナル)の穴埋めおよび、昨季問題となったセンターフォワードの補強が急務だったにもかかわらず、獲得した5人のうち、オスカルソンとアゲルドが加入したのは、すでにスペインリーグ第3節を終えた後の移籍市場最終日だった。こんな状態ではまともにチームを作ることなどできるわけがなく、危機的状況に陥ったのは必然だったのかもしれない。

久保も序盤、新戦力がうまくフィットせず、コンディションの悪いチームの影響を受け、得点を量産した昨季前半戦のような姿を見せられなかった。さらに9月に欧州リーグが開幕したことで、アルグアシル監督が息切れした昨季後半戦の二の舞を演じないためローテーションを実施。これにより久保はスタメンとベンチスタートを交互に繰り返してリズムを崩し、レギュラーの座が危ないと感じさせることもあった。

その状況が解消されたのは11月に入ってからだ。圧巻のパフォーマンスを披露したセビリア戦以降、アルグアシル監督の起用方針に変化があった。久保はこの試合を皮切りに、カテゴリーが下の国王杯2試合以外すべて先発。出場した直近の公式戦9試合の成績は6勝1分け2敗、2得点2アシスト。多くの試合で輝きを放ち、必要不可欠な選手であることを指揮官に認めさせた。

■11月月間MVP賞候補に

久保は今季特にビッグマッチで実力を発揮しており、ここまでで地元メディアに大絶賛された試合は、その間に行われたスペインリーグのセビリア戦(1得点、マッチMVP)、バルセロナ戦(マッチMVP)、そして公式戦16戦無敗の相手に1得点1アシストを記録し、チームを勝利に導いた欧州リーグのアヤックス戦だった。さらに12月最初のベティス戦でもマッチMVPに選出されている。

安定したパフォーマンスを発揮したことが大いに評価され、11月のスペインリーグ月間最優秀選手賞にノミネートされた(※最終的にレアル・マドリードのビニシウスが受賞)。残念ながら昨年9月以来となる2度目の受賞とはならなかったが、これは久保が昨季前半戦のような状態を取り戻しつつあることを示している。

久保の活躍にリードされるかのように、“クライシス”が囁かれていたチームも復活を遂げる。直近の公式戦6試合の成績は5勝1分けと無敗をキープ。さらに、シーズン開幕時からの課題である得点力不足を補ってきた堅守に磨きをかけ、そのすべてでクリーンシートを達成。スペインリーグではアトレチコ・マドリードと並び、最少失点チームとなっている(11失点)。

スペインリーグの総得点は1試合平均1点を切る16ゴールと未だ懸念材料であるものの、新戦力がチームにフィットし、エースのオヤルサバルが最近調子を上げてきたことで、得点力不足が解消され始めている。

久保の今季ここまでの公式戦成績は、22試合(先発17試合、フル出場5試合、負傷欠場なし)、1492分出場、10勝4分け8敗、4得点2アシスト、マッチMVP4回受賞。

■「今季10点は取りたい」

年内最終戦を残すのみとなった昨季同時期の成績が、23試合(先発19試合、フル出場7試合、負傷欠場なし)、1645分出場、11勝9分け3敗、6得点3アシスト、マッチMVP8回受賞であったことを考えると、数字的には下回っている。しかし、これは久保個人の問題ではなく、出だしで大きく躓いたチームのせいで思うようなパフォーマンスを発揮できなかったと解釈できる。

久保はアヤックス戦後に今季の個人的な目標について、「アシストは未知数だが、ゴールは見えてきている。しっかり今季10点は取りたいと思う」と語り、自身のパフォーマンスに手応えを感じているようだった。

欧州リーグと国王杯を勝ち進んだ場合、今季はまだ30試合以上残されている。そのため、ここまで5.5試合に1得点の割合でゴールを決めていることを考慮すると、けがすることなく現在のパフォーマンスを維持できれば、Rソシエダード初年度の22-23年シーズンに記録したキャリアハイの9ゴールを上回る可能性は十分あるだろう。

24年の終わりが近づくにつれて調子を上げてきた久保は、21日にアウェーで行われるスペインリーグ第18節セルタ戦で、年初めのアジアカップ参加により通常よりもハードになった過密日程の1年を締めくくる。

【高橋智行】(ニッカンスポーツコム/サッカーコラム「スペイン発サッカー紀行」)

レアル・ソシエダード久保建英(2024年撮影)
レアル・ソシエダード久保建英(2024年撮影)
久保建英(2024年5月29日撮影)
久保建英(2024年5月29日撮影)
26年サッカーW杯北中米大会アジア最終予選 日本対オーストラリア 前半、ドリブルする久保建英(手前)=2024年10月15日
26年サッカーW杯北中米大会アジア最終予選 日本対オーストラリア 前半、ドリブルする久保建英(手前)=2024年10月15日
サッカーW杯北中米大会アジア最終予選 日本対中国 後半、パスを出す久保建英=2024年9月5日
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