W杯4大会を経験した元日本代表GK楢崎正剛(42=名古屋)の引退を受けオーストラリアAリーグ、メルボルン・ビクトリーMF本田圭佑(32)が8日、思いをつづった。

遠慮なく言う本田と、言わずにぐっとのみ込み、静かに1歩引いて見守る楢崎。その生き方は正反対にも映るが、絶対的な結び付きがある。「恩師」であり「手本」で「尊敬」する偉大な先輩の節目に本田からのメッセージを。

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楢さんがどんなGKだったかと聞かれれば、プロには特に凄(すご)さが分かるGKだったと表現します。フリーキックの時もそうでしたが、対峙(たいじ)した相手に対して、常に冷静にプレッシャーを与えるあの能力が、楢さんの最大の特徴だったと考えています。

そしてあの冷静さが、味方全員にも絶妙な自信をもたらすことができるというのが、楢崎正剛のすごさだったと思います。

初めて楢さんに会ったのが僕が17歳で(星稜)高校2年生の時で、あれから15年たちます。今でも会うと「お前は俺の中ではまだ17歳」ってよくイジってきます。

でも、本当に当時からいろんな意味でめちゃくちゃだった僕を、どんな時でも包んでくれた、偉大な人格者です。僕にとってはお世話になった記憶しかない、恩師のような存在です。

楢さんが日本サッカーにもたらしたすごさは、ここで簡単に説明できるような軽いものではありません。ワールドカップに4回も出場した事実が、全てだと思います。

今後は方法論は問わないので、引き続き、多くの人に勇気を与え続ける、これまで通りの楢さんで居続けてほしいと思っています。

自分の損得だけでは動かない、素晴らしいお手本でした。こう口で言うのは簡単ですけど、実際は、自分を犠牲にしないとできないような言動が多くて、それを実行し続ける姿を、人としてずっと尊敬しています。