6月11日(日本時間12日)、FIFAワールドカップ2026(W杯)北中米大会が開幕した。日本(FIFAランキング18位)は、1次リーグF組初戦でオランダ(同7位)と対戦。GK鈴木彩艶(23=パルマ)は初出場を狙う。23年夏まで所属したJ1浦和レッズでともにプレーし、14年ブラジル大会日本代表のGK西川周作(39)が、日刊スポーツなどのインタビューに応じ、後輩の武器や魅力を語った。【取材・構成=飯岡大暉】
彩艶を知っているからこそのエールだ。元W杯戦士の西川は、16歳下の元チームメートの目に見える“大活躍”をあえて願わなかった。
「クロスにいっぱい出て欲しい。そういうGKは世界的に見てもいないと思う。クロスが上がって、ゴールライン際で止めるGKはたくさんいるが、シュートを打たせる前に、ボールを奪って欲しい。自分たちと一緒にやってきたものを、世界で証明してほしい。『ビッグセーブをしない彩艶』を見たい」
出会いは10年以上前。西川は14年に、広島から浦和に移籍した。鈴木彩は当時浦和ジュニアに所属していた小学生。トップチームの練習を見学しに来ることがあった。「まだその時は、細くて、かわいらしい感じだった」というが、小学生らしからぬ礼儀正しさに驚かされた。
「直立して、目を合わせて『こんにちは』と元気よくあいさつしてくれた。あそこまで人の目を見てあいさつされるのは、あまり経験したことがない。すごくちゃんとしていたことを、よく覚えている」
今では身長190センチになった鈴木彩は、中学生で一気に身長が伸びた。出会った当初は、まだ成長期を迎える前。体格は、特別大きいわけではなかった。それでも、周囲はすぐに素質を感じ取った。チームメートの元日本代表MF鈴木啓太からは「周作を脅かす存在が来たぞ」とイジられた。冗談半分に、笑いながら「トップに上がるのはゆっくりでいいからな」と声をかけ、苦笑いされたこともあった。
ユースに上がった頃、初めてプレーを目の当たりにした。小学生のときとは比べものにならないほど、体が大きくなっていた。「この選手は間違いなくトップチームに上がって(自分を)脅かす存在になる」。すぐに実力を実感した。
高校生ながら、トップチームの練習にも参加。183センチの西川とは、プレースタイルが異なっていた。ともにプレーするようになってからは、大きな刺激を受けた。
「身体能力はまねできないものがあった。学ぶ姿勢とチャレンジする姿勢もあった。素直で、言われたことはまずやってみる。こういう選手が伸びるんだろうと思った。自分も年齢を重ねて、頑固な一面もある。彩艶の姿を見ると学びになるし、もう1回自分も吸収するという気持ちでトレーニングや試合をやろうと思えた。自分の意識も変わったし、彼から学んだものもたくさんある」
驚かされることも少なくなかった。練習開始より早くにグラウンドに現れるのは当たり前。居残り練習も誰よりも遅くやっていた。午前に練習し、午後がフリーの時は、自らジムに行っていた。
「とにかく練習が好きで、練習量が半端ない。トップに上がったときは、今より細かったが、練習が終わっても筋トレをガンガン繰り返していた。体はどんどん大きくなって、自分とやっていたときより、今はもう一回り大きくなっている。彼の努力の証しだと思う」
21年には、一時ポジションを奪われた。シーズン途中に奪い返したが、試合に出られなかった期間で気づいたことがあった。
「彩艶は、試合が終わってすぐに着替えて、脱いだユニホームをスタッフと仕分けしていた。試合に出ていないときにやる人はいるけど、彩艶は試合に出てもそれをやっていた。僕が見たのは、(元日本代表MF)阿部勇樹さんか彩艶。ほんとに、こいつめちゃくちゃ良いヤツだなと。応援したくなって、自分も頑張ろうと思わせてくれた。ベンチになった数試合があったから、自分も意識高くやれている。彼がいなかったら、自分は今このクラブにいることはできなかった。それくらい、影響力はあった」
元日本代表だからこそ、分かる思いもある。23年アジア杯。鈴木彩は全5試合に先発出場した。無失点はゼロ。パンチングしたボールを押し込まれ、はじいたはずの球がゴールに吸い込まれた。準々決勝で姿を消し、守護神には厳しい声が寄せられた。
ただ、西川は全く心配していなかった。試合中に下を向かず、前を向く様子を見て、いつも通りだと感じた。大会中にはSNSで「勇敢であれ 頑張れ ザイオン そしていつも通り楽しんでね」と発信した。
「彩艶は絶対大丈夫だろうなという感じだったけど、周りがすごく過剰に反応していた。GKがすごく大変なポジションと理解していたので、彩艶に『また切り替えて楽しんでね』と言ったら『大丈夫です。頑張ります』と返ってきて、やっぱり気にしていないなと思った。あの経験は彼にとって大きかったし、海外での活躍にもつながったと思う。メンタルがドシッとしている。ふてぶてしさは、本当に素晴らしいと思う」
自身は、14年ブラジル大会でメンバー入り。ピッチには立てなかったものの、大舞台の空気感を知っている。元日本代表として、エールを送った。
「日本がどこまで行ってくれるんだろうと期待している。彩艶は一緒にやっていたので、出て欲しい。日本が見たことのない景色をみんなで見せて欲しい」


