<アジア大会:陸上>◇第14日◇2日◇韓国・仁川

 日本陸上界に“中国ショック”が走った。日本の金メダルが有望された男子400メートルリレー、男子やり投げの2種目で、日本の持つアジア記録を中国勢が、驚異的な記録で更新。日本は銀メダルに終わった。

 連覇を狙った男子やり投げの村上幸史(34=スズキ浜松AC)が、視線を宙にさまよわせた。「新井との勝負になると思ったら…。全然、違った。思い切りたたきのめされた」。中国・趙慶剛の最終投てきが89メートル15まで飛んだ。25年前に溝口和洋が出したアジア記録を1メートル55も更新された。4位の村上があきれ返れば、銀メダルの喜びなど吹き飛んだのが新井涼平(23=スズキ浜松AC)。「まさか、あそこまでとは…。85メートル以上投げられないと世界、いやアジアでも戦えない」と険しい表情で話した。

 さらにショックは重なる。今度はトラックの男子400メートルリレー。北京五輪では銅メダル、世界大会ではアジアNO・1での入賞常連組が日本の立ち位置だった。38秒03の日本=アジア記録を更新し、次は37秒台突入-。その夢を打ち砕かれた。アンカー前に勝負あり。37秒99の数字を中国がたたき出した。

 桐生不在、大会中に山県と高瀬も故障を抱えた。そんな状況を伊東浩司短距離部長(44)は憂いて言う。「(1大会で)2本、3本走っただけで脚が痛い、と言っている時代から脱しないとダメです。来年の世界選手権で抜き返すためにも、もっと世界に行ってもまれて」と、最近の中国の強化策を挙げて強調した。今に始まったわけではない中国のプレッシャー。手をこまねいていては、そのうちアジア大会で君が代が聞けない時代が来るかもしれない。【渡辺佳彦】