全日本実業団対抗女子駅伝は27日、宮城県松島町文化観光交流館前~仙台市陸上競技場の6区間42・195キロで行われる。出場2回目の新興チーム、日本郵政グループは今夏のリオ五輪に早くも代表2人を送り込んだ。来年の優勝争いを期して、チームの底上げを今大会で図る。

 高橋昌彦監督は「昨年の12位を1つでも上回ること」と目標設定を控えめにしている。リオ五輪5000メートル出場の鈴木亜由子(25)が、五輪前に痛めた左足底の状態が万全でないことも理由の1つ。負荷の大きいポイント練習は11月になって始めたばかりで、長距離区間の3区(10・9キロ)と5区(10・0キロ)へは「今後のこともある」と起用しない方針だ。

 もう1人のリオ五輪代表(1万メートル)の関根花観(20)は、10月の予選会で3区区間16位と低調な走りだった。チームは4区を終わって16位と、予選通過ラインの12位よりも後方に位置していた。その窮地を救ったのが高卒ルーキーの中川京香(19)。5区で区間賞の快走を見せて予選通過圏内の12位までチームを引き上げた。続く最終6区の寺内希(19)も区間賞の走りで8位でゴールし余裕を持っての通過になった。

 クイーンズ駅伝に向けて関根は「予選会の借りは、しっかり本戦で返します」と決意を見せた。予選会の不調は五輪後の休養明けに駅伝に間に合わせようと練習を詰め込みすぎたから。同じ轍は踏まないだろう。

 そして中川が計算できる選手に成長したことが大きい。高橋監督は「風などの悪条件の中でも、自分のペースをしっかり刻める選手。いずれは日本トップクラスになれる」と高く評価する。現時点では、代表選手たちと比べるとスピードが劣るが、調子が良ければ3区起用もある。

 予選会のように前半で出遅れると本大会では致命傷になる。中川が3区を走るようなら関根の1区起用が濃厚。2区(3・9キロ)に鈴木が出場できるようになれば、超前半型のオーダーでトップ争いに加わる可能性も十分だ。

 後半は予選会6区区間賞の寺内や、日本インカレ1万メートル2連勝の実績を持つ新人の鍋島莉奈(22)、「状態が上がっている」と高橋監督が言う岩高莉奈(20)ら4番手以下の選手の力が問われる。

 日本郵政グループは2014年に、同社初の運動部としてスタートした。世界で戦える選手の育成とともに、郵便事業と親和性の高い駅伝での全国優勝を目標に掲げた。高橋監督は「そのためのステップ」と今年の駅伝を位置づけている。「五輪代表2人がいる間に優勝争いをできるチームにしたい。来年は面白くなると思っています。今年、代表2人以外も育っていることを確認して、来年への自信にしたい」。 高橋監督の言う“優勝争い”は、限りなく“優勝”に近い。