青学大にも死角あり-。東京箱根間往復大学駅伝(来年1月2、3日)の注目ポイントを紹介する連載「箱根のミカタ」第2回は、住友電工陸上競技部の渡辺康幸監督(43)が登場。早大を10年度に駅伝3冠に導いた経験を踏まえ、3冠の難しさなど、公私ともに親しい原監督率いる王者・青学大について語ってもらいました。【取材・構成=上田悠太】

 戦力的に青学大の層が厚く、平地での勝負では抜けてます。原監督の選手起用も緻密で盤石に見えますが、不安要素もあります。

 (3冠の難しさは)出雲、全日本を取った後に2カ月空く。この時期はインフルエンザ、ノロウイルスにも感染しやすくなり、見えない敵との戦いもあります。何もなくハッピーな状況でスタートラインに立つのは容易ではありません。

 原監督は何も(重圧を)感じてないように見えるかもしれないですけど、心中穏やかではないはずです。四六時中オーダーのことを考えて、故障者が出たらどうしようとネガティブなことが頭をよぎり、考えれば考えるほど眠れない。私も、毎年胃が痛くなりました。選手も緊張でいつもと行動が違ったりします。普段は食べない食事をとったり、飲まない薬を飲んだり、レース当日の起床時間に合わせるために寝る時間を早くし、布団の中に入っても寝られないなど、平常心でいることが難しいんです。

 青学大に関して言えば、ゲームチェンジャー(レースを動かすキーマン)も前回までは神野君、久保田君、小椋君がいましたが、今回は一色君(4年)だけ。1区間でもブレーキがあると優勝は遠のきます。出雲と全日本は一色君がアンカーでテープを切りましたが、箱根は2区で出てきます。復路は一色君抜きなので、競った時にどんな展開になるのか注目です。

 過去2大会5区を走った神野君が卒業し、山登りの経験がある選手がいないのも不安ですね。勝負のウエートの7、8割は山の登り下り。山登りの準備は1年間させますが、必ずしも本番で100%の力を出し切れるとは限りません。全10区間の中で、特に経験がものを言う区間なのです。

 (青学大の対抗は)5区経験者が残り、4年生が安定している早大だと思います。往路はニャイロ君(2年)で流れを作れる山梨学院大が優勝する確率が一番高いのでないかと思います。

 ◆渡辺康幸(わたなべ・やすゆき)1973年(昭48)6月8日、千葉市生まれ。中学で陸上を始め、市船橋高を経て早大進学。箱根のエースとして活躍し、3度の区間賞と1度の区間新をマーク。96年エスビー入社、02年に引退。04年4月に早大競走部の監督に就任。10年度は出雲、全日本、箱根駅伝と3冠獲得。15年4月から住友電工陸上競技部の監督に就任。

 ◆10年度の早大3冠への試練 5区に予定していた佐々木寛文が座骨神経痛で、9区予定の志方文典が右足甲の疲労骨折で箱根駅伝の欠場を余儀なくされた。ともに出雲、全日本を制した主力選手だった。