「最強の公務員ランナー」は責任感に満ちていた。陸上の世界選手権男子マラソン9位で日本代表から引退の意志を示した川内優輝(30=埼玉県庁)が9日、ロンドンから羽田空港に帰国し、報道陣に謝罪した。

 到着ゲートから移動後、別室で取材に応じた川内は冒頭、謝罪の言葉を述べた。「チームジャパンとして20数年ぶりに入賞がなかったとのこと。私もあと少しのところで(入賞に)届かず、実力不足で申し訳ありませんでした」と頭を下げた。男女ともマラソンで入賞なしは95年イエーテボリ(スウェーデン)大会以来22年ぶりだった。

 大会前には「目標はメダル、最低限の目標は入賞」としていた。残念ながら入賞圏の8位も逃したが、複雑な心境を明かした。「初めて『実力不足で目標達成出来なかった』と言えるレースだった。代表としては申し訳ない気持ちだが、一方で個人としては調整もうまくいった中で初めて世界大会で実力を出せた。これまでやってきたことが無駄でなかった」と振り返った。

 序盤で看板に激突し、その後に段差で転倒。20キロ過ぎに先頭集団から脱落し、26・5キロ付近では給水に失敗した。歯を食いしばり必死の形相で前の選手を追って、8位と3秒差の9位でゴールした。「7、8位が見える中でこの結果…。完全燃焼したかったけど、モヤモヤの悔しさもある変な状態です」と苦笑いした。

 日本代表引退の意向を示している。日本代表とは目標でもあるが、結果を出さないと日本代表であるべきではないと考えている。「(世界選手権に)3回挑戦して結果を出せなかった。20年東京五輪は暑さも加わり、これ以上の順位(9位)を臨むことは難しいと思う。今後は若い選手の刺激になるような存在になれれば」。冷静に分析しながら若手の成長を期待した。

 10日から軽めの練習を再開するという川内は、最後まで「らしさ」を貫いた。「しばらく放っておいて欲しいです。これまで日本代表のプレッシャーで苦しいことばかりで、受けなくても良いプレッシャーも受けていました。精神的に休む時間が欲しいです。よろしくお願いします」。頭を下げて、すがすがしい表情で去っていった。