大迫傑(27=ナイキ・オレゴンプロジェクト)が異次元の走りで日本記録を塗り替えた。過酷なコンディションの中、世界のトップと互角に走り2時間5分50秒で3位。今年2月に設楽悠太(26)が出した2時間6分11秒の日本記録を大きく上回り、6分の壁を破るとともに報奨金1億円も手にした。

強い意志力がある。大迫は早大1年時の10年世界ジュニア選手権男子1万メートルで周回遅れの洗礼を浴びてから、より世界へ目を向けるようになった。その中で超一流選手が集まる「ナイキ・オレゴンプロジェクト」への参加を志した。

もちろんナイキがサポートする選手のための場。以前は違うメーカーのシューズを愛用していたが、渡辺康幸監督(45=現住友電工)に「強くなるためなら、血が出ようが、どんな靴も履く。ナイキを履きオレゴンに行きたい」と訴えたという。

念願かない、3年時3月に渡辺監督と練習参加が実現。選手だけでなく、フィジカルトレーナー、栄養士など各分野の超一流がそろう環境を目の当たりにした。すぐひかれた。だが現実は甘くない。当時、世界中からチーム入りの希望者が殺到しており、世界的には名もなきアジア人はあっさり断られた。でも諦めない。その1カ月後。渡辺監督に「1人で行かせてください」と直訴。再挑戦も結果は「練習生」扱いだった。

それが同年5月。1万メートルで当時日本歴代4位の27分38秒31を出し、13年世界選手権の参加標準記録を突破。熱意だけでなく実力も証明した。アジア人初となるチーム入りが許された。飛躍を支えた環境を手にした裏には、くじけず、貫いた信念があった。【上田悠太】