全日本実業団対抗駅伝(ニューイヤー駅伝)は来月1日、前橋市の群馬県庁前を発着点とする7区間(100キロ)で行われる。九電工はベテランが頑張ってきたチームだが、世界陸上マラソン代表経験者の前田和浩(37)が前回のニューイヤー駅伝で引退。代わって2年目の大塚祥平(24)がMGC(※)出場権を獲得するなど、エースとして期待される選手に成長してきた。

大塚は駒大時代は4年連続で箱根駅伝に出場。4年時に山登りの5区で区間賞を獲得した実力者だが、トラックのスピードがそれほどあるわけではなかった。しかし九電工入社1年目の前回大会で、早くもニューイヤー駅伝のエース区間である4区を任された。結果は区間14位。チームの順位も2つ落とし、レース直後には「実業団の4区は厳しい」とチーム関係者に漏らしたという。だが前田から「マラソンで勝負するなら4区で頑張れ」と激励された。大塚もその夜には「今日の借りを来年返します」と関係者の前であいさつした。

今季はマラソンで大きく飛躍。2月の別府大分で2時間10分12秒で3位(日本人2位)になると、8月の北海道では2時間12分07秒の4位(日本人3位)となりMGCの出場権を獲得した。駅伝でも九州予選で7区(16.3キロ)区間賞。リオ五輪マラソン代表だった佐々木悟(旭化成)に14秒差で勝った。

就任2年目の片渕博文監督は「練習が継続できるのが特徴です。レースでものすごく良くなるタイプではありませんが、練習したものを試合で出せる。駅伝を利用してスピードをつけて、マラソンで勝負させたい」と評する。

ニューイヤー駅伝の4区では設楽悠太(ホンダ)や井上大仁(MHPS)ら、MGCで東京五輪代表を争う選手たちとの対決が予想される。そこで良い勝負ができれば、次のマラソン(3月の東京を予定)への期待がふくらむ。

大塚以外では中村信一郎(25)と東遊馬(23)に注目だ。中村は九州予選1区で区間賞。本番でも1500メートルのスピードを、速い展開になる1区、または3区で生かすだろう。東もスピードランナーとして期待される選手。昨年の全日本実業団陸上3000メートル障害に優勝し、今季は1万メートルで自己記録を大幅に更新した。28分3秒46は今季日本6位の好タイムだ。

片渕監督は「5位」を目標に掲げた。「12年に5位になったチームと、シーズンベストなどデータを比較して、前回は8位入賞を目標にしました。実際は12位でしたが8位は狙えたと判断できた。前回からの上積みを考えて5位としました」。

前回8位のMHPSとの差は30秒。九州予選では、そのMHPSを抑えて2位に入った。若手中心に生まれ変わった九電工と、エースの大塚が全国に存在をアピールする。

※MGC=マラソン・グランドチャンピオンシップ。東京五輪マラソン代表選考会。