【ドーハ(カタール)25日=上田悠太】規格外の位置を見据える。陸上の世界選手権(27日開幕)で男子100メートル代表のサニブラウン・ハキーム(20=米フロリダ大)が会見し、「優勝する勢いで」と抱負を述べた。

同種目のオリンピック(五輪)、世界選手権で日本勢は1932年ロサンゼルス五輪の吉岡隆徳以来87年も決勝進出はないが、狙うはそれ以上。9選手が登壇した会見で、サニブラウン以外は「決勝進出」か「入賞」が目標だっただけに、その存在感は際立った。

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100メートル代表3選手のセンターに位置したサニブラウンはさらっと言った。

「準備はぼちぼち。あとはやるだけ。目標は優勝をする勢いでやれれば」。

2年前の前回大会では200メートルで18歳5カ月という史上最年少の決勝進出。今季は200メートルの練習を十分に積んでいないこともあり、100メートルに集中する。

9秒58の世界記録保持者ボルトが引退し、絶対王者は不在。「ベストタイムで言えば、3人が抜けているが、決勝のスタートラインに立ってしまえば、何が起こるか分からない。誰が勝ってもおかしくない。そこで死力を尽くせれば、誰だって優勝が見えてくる。その場面で自分の走りができれば」。自己記録は世界歴代2位となるヨハン・ブレーク(ジャマイカ)の9秒69、前回王者ガトリンの9秒74、優勝候補コールマンの9秒79(ともに米国)と続き、サニブラウンの9秒97は18番目。ただシーズンベストの9秒90以上は3人だけ。11番目以上に、その距離感は縮まる。9秒97以上の「死力を尽くせば」王者の資格はあると捉える。

2年ぶりに日の丸を背負う。誇りを胸に戦うが、同時にこうも強調する。「走るのは自分。代表だから、世界陸上だからと大きなものにとらわれず、ただの1試合として取り組めれば」。世界を意識した日常の積み重ねがあるから「ただの1試合」と言い切れる。

「あまり緊張もしない体質」とも言う。40度を超えるドーハの気温も「フロリダもこのぐらい暑い。暑さ耐性がついている」と笑う。高校時代から「地上最速」が目標。ネクスト・ボルトを本気で狙っている。