プロスケーターで元世界女王の安藤美姫さん(29)に、オジサン代表の観戦ビギナー、井上真記者(52)がフィギュアスケートのいろはを教えてもらう「教えて! 美姫先生」の第3回は、表現力って何? です。どうやって採点されるのか聞きました。

イラスト※1 17年世界選手権男子ショートプログラムの羽生の演技
イラスト※1 17年世界選手権男子ショートプログラムの羽生の演技

 井上記者 採点の中に表現の項目(イラスト※1)がありますよね。これが抽象的でビギナーには難しいです。

 安藤先生 一番分かりやすいのは、曲をよく理解して一体になっているか、という点です。曲の盛り上がりに合わせてゆっくりから力強くとか、激しさから静かな動きへなど、強弱をつけるところが曲とマッチしているかが大事ですね。

 井上記者 なるほど。でも、その中でも5つに分かれているようですが。

 安藤先生 それぞれで見ているところが違うんです。1つ目は基礎のスケーティング(※2)です。どれだけ基本の滑る動作が美しいか。2つ目のトランジション(※3)というのは、技と技をつなぐ動きのこと。3つ目のパフォーマンス(※4)は、どれだけ見ている人たちにアピールできているか。4つ目のコンポジション(※5)はどれだけ振り付けをきちんとこなしているか。5つ目(※6)は音楽を理解して滑っているか、です。一番得点を取りにくいのが、2番目のつなぎですね。

 井上記者 どうすれば、この「表現力」は評価してもらえるんでしょうか。

 安藤先生 今はジュニアでも上手な子がたくさんいますが、滑りに“重み”があるのはシニアの一部の選手だけですね。何かを訴える滑り、といいますか…。その重み、というのが反映すると思います。

 井上記者 これは、人によって感じ方が違う気がするんですが…。不本意な採点に納得いかないこともあったんじゃないですか。

 安藤先生 ジャッジも人間ですし、好みもあります。私の場合、現役時代には試合の後にジャッジの方を見かけると質問することもありました。

 井上記者 え? 話していいんですか?

 安藤先生 ええ、大丈夫です。いろんなジャッジの方と話し、さまざまな視点から話をしていただきました。普通のことです。人が演じて、人が採点することですから。(つづく)【取材・構成=井上真、高場泉穂】

ホワイトボードで説明する安藤美姫さん
ホワイトボードで説明する安藤美姫さん