東京・歌舞伎座で2日から襲名披露興行が始まった市川染五郎あらため10代目松本幸四郎(44)。昨年5月、国立代々木競技場のスケートリンクで高橋大輔氏、荒川静香氏、鈴木明子氏、織田信成氏、浅田舞氏らスケーターとコラボした歌舞伎×アイスショー「氷艶hyoen2017 破沙羅」に出演した。幸四郎は歌舞伎を代表する悪役の仁木弾正、高橋氏は義経、荒川氏は女神稲生と蛇髪姫の2役で、鈴木氏は静御前、織田氏は瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)、浅田氏は木花開耶姫(このはなさくやひめ)、村上佳菜子氏は天鈿女命(あめのうずめのみこと)を演じた。

 自らもスケート靴を履いてリンクを駆け回った幸四郎は「フィギュアスケーターと実際にやってみて、彼らのすごい技術と精神力を目の当たりにしました。今まで役を演じるということはやったことがないというので、最初はスケートで表現することに心配だったようですが、役を自分の中で消化して、しっかりと作り上げていました」

 かつて、アイスホッケーを舞台にしたドラマに出演したことはあるが、プロスケーターと共演して感じたのは、想像以上のスケートによるスピード感だった。

 「本当に瞬間移動できる。常人じゃないスピードは気味悪さ、怖さにもつながっていく。歌舞伎の舞台ではこんなスピードで移動はできませんからね。スケート靴を履くと、人間の足ではたどり着けないスピード、距離で到達できる。通常の歌舞伎ではあり得ない迫力を出せるし、そのスピード感に魅力を感じました」

 一方、歌舞伎とフィギュアの共通点も感じたという。それは「美しさ」だという。

 「歌舞伎は1つ1つのせりふ、所作、そのどこを切り取られても美しく見えなければいけない。フィギュアも、また美しさを競い合うスポーツです。この『美しさ』という共通点があるから、歌舞伎とフィギュアスケートが融合できると確信できました」【林尚之】