今回は東京オリンピック・パラリンピックにおいて、競技の裏側を支える人についてお話ししたい。パラトライアスロンで円尾敦子選手(視覚障害)のガイドを務めた菊池日出子さんだ。
メダル獲得の反響もあり、注目を浴びているパラトライアスロン。その縁の下の力持ち的な存在が菊池さんだ。元々エリートカテゴリーでオリンピックを目指していた。2012年ロンドン五輪では最終選考選手として戦った実力者だった。
2018年の現役引退後、長年パラトライアスロンを牽引している富川リーダーから声をかけられた。「レースを見に行ってみたら興味が出て、ガイドをやってみようと思った」。パラトライアスロンの組織に入り、スタッフとしての役目を果たしつつ、ガイドという大役もこなすことになる。
彼女に話を聞いた。
-ガイドをして大変だったことは?
菊池さん レースでは自分が失敗するわけにはいかないので、そのプレッシャーとの闘いでした。
-自分のために戦うこととの違いは?
菊池さん 自分だけが頑張ればいいかといえば違うと思っていたので、選手が100%力を出し切るために自分はどうすべきかいつも考えていました。
-スタッフの立場として、今回のパラリンピックで好成績が出た理由は何だと思いますか?
菊池さん 東京の気候でパフォーマンスを出すために対策をしっかりしてきたことかと。また、みんな自分の弱点と向き合ってトレーニングを重ねてきたこと、自分自身や応援してくれる人を信じてレースに臨んだことが好成績につながったのではないかと感じています。
-トライアスロンはオリンピックを目指す選手とパラリンピックを目指す選手が近い存在にある競技団体だと思いますが、どういう部分がメリットだと思いますか?
菊池さん オリンピック・パラリンピックを目指す選手が一緒にトレーニングや合宿ができるところは、スピードは違うこともあるけれど、お互いの頑張りに励まされることは多いと思います。メダリストの宇田秀生選手は、東京オリンピック代表候補やエリートカテゴリーで戦っている若手の選手らともトレーニングをしてました!
-パラトライアスロンに対する注目度も上がったと思うが、今後どのようにしてさらに普及させていきたいと考えますか?
菊池さん トライアスロンはやったことがない人にとってはハードルが高いように感じる種目だと思うので、まずはアクアスロンやデュアスロン、距離が短いトライアスロンのレースなどに挑戦できる機会を増やしていければと思います!
菊池さんのインタビューを通して、改めて裏方であるスタッフの努力と表舞台で輝く選手の努力が混ざり合っての功績だと感じた。
彼女はパラトライアスロンの魅力を「健常者のトライアスロンと違って、選手とガイドとかハンドラー(補助役)とか、選手1人だけでなく力を合わせてレースするところに新鮮さを感じました」と話す。
私はトライアスロンというスポーツはエンターテインメント性があると感じている。選手、応援者、審判、ボランティア…役目はおのおの違うが、その方々が一体となって作り出す空間が大好きだ。
菊池さんも話すように「選手1人だけでなく、力を合わせてやるスポーツ」。裏側でも主役になれる。そこにもトライアスロンの魅力が詰まっていると思う。
(加藤友里恵=リオデジャネイロ五輪トライアスロン代表)