新しい講演会の形が動きだしている。6月25日、92年バルセロナオリンピック(五輪)競泳女子200メートル平泳ぎ金メダル岩崎恭子さん(41)がパソコン画面の中で話し始めた。

マネジメント会社「スポーツビズ」によるオンライン講演会のデモンストレーション。岩崎さんが、聴講者に対して「皆さん、どこから視聴していますか?」と聞くと画面上にアンケートのボタンが登場。「自宅54%、会社33%、その他14%」と結果がすぐに表示された。

メダリスト、オリンピアンの講演会は入社式など社内イベント、自治体の記念行事などで人気を集める。しかし新型コロナウイルス感染拡大で、岩崎さんは2月以降のイベント、水泳教室、講演はすべてなくなった。その代わりとなる関係者向けのテストイベントだった。

通常は60分か90分の講演会を30分に短縮して、最後に金メダルも披露した。岩崎さんは都内の同社事務所内から映像を配信。「周りに事務所の方がいて不思議な感覚でしたが、リラックスしてしゃべることができました。全国から聞けるということが特長だと思います。コロナ禍で生活が変わり、大変なこともあると思いますが、受け入れることで発見もあります」と締めくくった。

デモ講演会を通して見たが、特に違和感はなかった。むしろひな壇でマイクを持つ通常スタイルよりも、常に画面いっぱいに講師が映ってしゃべっているだけに、親近感が湧く感覚だ。

スポーツビズによると、デモ講演会の反応は上々だという。関係者は「オンラインの可能性が見えたという声や、要望を検討させていただきます、という声をもらいました」。オンライン講演会は、聴講者1人1人が別々の場所にいることを想定している。アンケート以外にも、チャット機能やQ&A機能を使って、聴講者が講師に質問をすることも可能だ。何よりも日本全国、場合によっては海外からの要望にも対応できる。同関係者は「対面の場合、海外というのはなかなかない。今回のデモは海外から聞いてくださる方もいました」。同社では今後、従来の対面方式とオンライン方式の2つを準備。要望があれば、オンライン講演会開催に向けて、主催者との話し合いに入れるという。

岩崎さんは「私も初めてでどう開かれるかと考えていましたが、新しいことに挑戦することも大事かなと思っています」と明るい声。より多くの人にスポーツ選手の声が届くきっかけになりそうだ。【益田一弘】(ニッカンスポーツ・コム/スポーツコラム「We Love Sports」)

◆益田一弘(ますだ・かずひろ)広島市出身、00年入社の44歳。五輪は14年ソチでフィギュアスケート、16年リオで陸上、18年平昌でカーリングなどを取材。16年11月から五輪担当キャップとなり水泳を取材。

オンライン講演会を行う92年バルセロナ五輪競泳女子金メダル岩崎恭子さん(スポーツビズ提供)
オンライン講演会を行う92年バルセロナ五輪競泳女子金メダル岩崎恭子さん(スポーツビズ提供)
オンライン講演会を行う92年バルセロナ五輪競泳女子金メダル岩崎恭子さん(スポーツビズ提供)
オンライン講演会を行う92年バルセロナ五輪競泳女子金メダル岩崎恭子さん(スポーツビズ提供)