先週からいよいよプレーオフが始まった。初戦のザ・ノーザントラストを制したのは今季、世界ランク1位ながらメジャーで勝利をつかむことができなかった、ダスティン・ジョンソン(米国)だった。


●欧州ツアーのカリスマコーチ


 ジョンソンは2月末から3月にかけて出場した3試合すべてで優勝を果たし、マスターズでも優勝候補最有力だった。しかし開催週の水曜日に階段から落下し無念の棄権。そこからノーザントラストまで優勝はなかったが、プレーオフ初戦で勝利をもぎ取るあたりは、さすがの一言に尽きる。

 そのジョンソンが欠場した今年のマスターズでチャンピオンになったのはスペインのセルヒオ・ガルシアだったが、その後の3つのメジャーを制したのはいずれもアメリカ人選手だった。プレーオフでは欧州勢の巻き返しが期待される。

 そのヨーロピアンツアーの選手たちから多くの支持を得るコーチがいる。パッティング専門コーチのフィル・ケニオンだ。

 昨年のPGAツアー年間王者のローリー・マキロイをはじめ、ノーザントラストの前週に行われたウィンダム選手権で優勝したヘンリック・ステンソン、そのほかにもメジャーチャンピオンのジャスティン・ローズやルイ・ウェストヘイゼンがケニオンをコーチにつけている。


フィル・ケニオン氏(中央奥)が主催する「ハロルド・スウォッシュ・インストラクタープログラム」の模様
フィル・ケニオン氏(中央奥)が主催する「ハロルド・スウォッシュ・インストラクタープログラム」の模様

 ケニオンは私も資格を保有する「ハロルド・スウォッシュ・インストラクタープログラム」でパッティングを7つの項目に分けて考えることを推奨している。この項目がいわば修正方法の引き出しだ。選手の課題を見つけ、この引き出しの項目をもとに適切な解決方法を探っていく。


【ケニオンのパッティング理論を構成する7つの要素】

・エイムバイアス(向き)

・ストロークダイナミクス(ストロークの動き)

・パターフィッティング(道具とのフィッティング)

・ボールロールダイナミクス(ボールの転がり)

・スピードダイナミクス(ボールのスピード)

・グリーンリーディング(グリーンのヨミ)

・ターゲティングストラテジー(カップや目標の狙い方)


 たとえばインパクトでフェースが開いているという事実があるとする。これの原因は7つの項目のうち、どこにあるのかを突き詰めていくのがケニオンの考え方だ。


●パッティングは物理運動


 ケニオンのようにパッティング専門のコーチは増えてきている。ドライバーショット専門のコーチはいないのになぜパッティング専門コーチはいるのか。

 パッティングのストロークがショットのスイングと動きが異なるという事もあるのだが、パッティングには体力や感覚がほとんど必要とされないという点が挙げられる。つまりパッティングはボールをまっすぐに転がすための物理運動という側面が非常に大きい。論理的なアプローチで解決できる部分が大きいという事だ。

 そのためプレーヤーとしての経験やコーチングのキャリアがそれほどないコーチでも、選手の課題を見つける能力と、それを分析できる物理学の引き出しがあれば、優秀なコーチになりうるのだ。


●アドレスを極めればプロに近づける


フィル・ケニオン氏(左)と筆者
フィル・ケニオン氏(左)と筆者

 かくいう私も先に述べたフィル・ケニオンや巨匠パッティングコーチ・デーブ・ペルツの理論をはじめ、世界各国のさまざまなパッティングのメソッドを学んだ経験から、パッティングのティーチングをすることがある。パッティングのレッスンの場合、課題を可視化するためパッティング専用の計測機器を使ってフェースやボールの動きを分析し課題を見つけていくのだが、ほとんどの場合、問題の原因はアドレスにある。自分が目標に対して「真っすぐ」だと思っているものが、微妙にずれているのだ。フェースの向きや、肩と足のラインから目線まで、すべてスクェアに構えられているプレーヤーはいない。そして、その微妙なズレに気づき、補正するためには知識とロジックをベースとした「見る目」を養う必要がある。だからこそプロでさえ専門のコーチをつけるのだ。

 逆に言えば、パッティングのロジックを知り、大まかなアドレスやストロークのチェック項目を満たすことができれば、カップインの確率は格段に上がる。細かいタッチはスタート前の練習グリーンでチェックすればいいし、傾斜に対してどの程度曲がるかは、ラインを読む方法を知れば身につく。

 知識とロジックを理解したうえで、ターゲットに対して狙い通りに構えられているかという点を極めれば、アマチュアでもプロをしのぐストロークを手に入れる事は不可能ではないと思う。

 ◇ ◇

 手前味噌にはなるが、そんな世界のパッティングコーチが指導する内容をまとめたものを上梓することになった。

 
 

『ロジカルパッティング』 著・吉田洋一郎 発行・実業之日本社

紹介URL:

http://hiroichiro.com/blog/


 書いているさなか、「これを本気で実行してくれたら、アマチュアでもプロに限りなく近づく事ができるんじゃないか」と思ってワクワクした。そもそもパッティングには空振りもOBもないのだから、そんなことも夢ではないはずだ。


 ◆吉田洋一郎(よしだ・ひろいちろう)北海道苫小牧市出身。シングルプレーヤー養成に特化したゴルフスイングコンサルタント。メジャータイトル21勝に貢献した世界NO・1コーチ、デビッド・レッドベター氏を日本へ2度招請し、レッスンメソッドを直接学ぶ。ゴルフ先進国アメリカにて米PGAツアー選手を指導する50人以上のゴルフインストラクターから心技体における最新理論を学び研究活動を行っている。早大スポーツ学術院で最新科学機器を用いた共同研究も。監修した書籍「ゴルフのきほん」(西東社)は3万部のロングセラー。オフィシャルブログ http://hiroichiro.com/blog/


(ニッカンスポーツ・コム/ゴルフコラム「ゴルフスイングコンサルタント吉田洋一郎の日本人は知らない米PGAツアーティーチングの世界」)