男子ゴルフの国内ツアー開幕戦、フジサンケイ・クラシックで優勝した星野陸也(24=フリー)は、新型コロナウイルス感染症の影響で生じた長いオフを生かして見事に3勝目を飾った。本来の開幕戦、東建ホームメイト杯から5カ月。さらにその前の実際のオフ期間を入れれば、8カ月のオフを男子ゴルファーたちは過ごしたことになる。

星野は、まず終盤戦になると体が疲れ軸がぶれやすくなるスイング改造に取り組んだ。「自分なりに研修し、自分のクセと照らし合わせ、動きやすい打ち方、軸がぶれないようなスイングに大幅改造した。自分なりに新しいスイングになった」という。その結果、大会期間中は「体が楽。体の張るところが少なく、肩や腰、手首を痛めたりしていたのが、それもなく、スイングがうまくいっている」と話した。

長い期間のオフになったことで、これまでやらなかったことにも取り組んだ。自分で卓球台を買い込み「自分のスイングにどう生かすか、考えて卓球をやった」。ラケットのラバーの面でボールがどう回転するのかを見ながら、自分のスイングとゴルフボールを打ち出す際の球の回転を考えたという。

スイング改造の際に、大リーグ、大谷翔平のスイングを参考にしたこともあった。「あんまり詳しくはわからないが、大谷選手は器用にホームランを打つし、効率がいいのかなと思う。ユーチューブで見たスイングもすごくきれいなスイングで、ゴルフで考えたスイングとつながったりもするから」と、優勝会見では熱く語っていた。

186センチという長身からロングヒッターのイメージがあるが、実は器用な選手だ。フェード、ドローとコースの状況に合わせて打ち分け、細かなテクニックを駆使して攻略していく。その裏付けとなるのが研究熱心さだ。国内屈指の難コースといわれる富士桜CCで、尊敬する石川遼以来の複数回優勝を果たしたのも、その表れだと思う。

コロナ禍の中、これまで経験したことのない困難な状況をどう克服するか。スポーツ選手だけに与えられた試練ではないが、星野の勝利は多くの人の手本になると思う。困難な中で、後ろ向きになるのではなく、前向きに新しいものに挑戦する気持ち。星野は会見で何度も「めちゃくちゃ考えた」と話した。考えた末にコロナに打ち勝った。【桝田朗】(ニッカンスポーツ・コム/ゴルフコラム「ピッチマーク」)