ホッとした。いや、やっぱりそうなったか、と言うべきか。22日、PINGのオンライン新製品発表会で鈴木愛(26=セールスフォース)の心境、モチベーションを聞くことができた。

「ちょっとゴルフから離れたことで、自然とゴルフが楽しめるようになった。休んだことで気持ちも楽になり、体も疲れが取れた。今は十分、やる気になっています」-

21年の国内ゴルフ開幕にあたり、一番気になっていたのは黄金世代ら若手でなく、鈴木だった。昨年11月末に20年最終戦JLPGAツアー選手権リコーカップが終わった時、彼女の“やさぐれ感”は半端ではなかった。

「やっと終わってくれました。こんだけうまくいかんくて、よく頑張ったと思う。ゴルフをやりたくないです。またやりたくなること? いや、ずっとないと思います」

その時その時の感情をそのまま口にするプロだから「まあ今だけやろ」と思ってはいたが、いくらなんでも「ずっとない」は引っ掛かった。そのまま受け取ると“金輪際、ゴルフは嫌”になる。なので、少しだけ心配だった。

黄金、ミレニアム、新世紀など若い世代が雨後のたけのこのように台頭し、隆盛を決める国内女子ゴルフだが、大黒柱は鈴木だ。昨年「いっこも入らん」を愚痴をこぼしまくったパットは現時点の部門別ランク、平均パット数(パーオン時)で1・7557の1位。開催された全14戦に出て、予選落ち2回、棄権1回があり優勝はなし。それでも、賞金ランクは約3678万円を稼いで9位にいる。「うまくいかん」「入らん」のレベルが、他のプロと違いすぎる。

なぜ違うのか? 練習しているからだ。私見だが、最近の若い世代もよく練習するプロは多いと思うが、鈴木には量、質ともにかなわない。

昨年、ゴルフ専門チャンネルで鈴木が自分のマネジメントを語る番組に出ていた。一緒にいたのが、プロキャディーの森本真祐氏(ツアー通算33勝サポート、日本プロキャディー協会代表理事)。彼が鈴木愛のすごさの1つに「練習量」を挙げると、鈴木が横で「そこ、もっと言って」とせっついていた。元々「練習嫌い」と本人から聞いたことがあるが、その番組で「申ジエさんを見て」それ以上の練習をしようと決めた、と話していた。

自分よりうまい人の上に行くなら、その人以上の努力が必要だ。しかし、不思議とその当然をしないプロは多い。2000年前後、ラウンド後の練習量が最も豊富だったのは不動裕理であり、福嶋晃子だった。「うまい人」だ。うまい人は練習でうまくなった。怠けると下手になる→練習する。きっと、そんな不安が練習量につながり、トップの座を守ることになる。現在は鈴木だけでなく申ジエも、上田桃子もそう。いつの世も「下手な人」より「うまい人」の方が練習する。

今をときめく若い世代が、結果が出ないとストレスでぶち切れるぐらいの練習を何年も重ねていけるか? 日本女子ゴルフの大黒柱、若手のお手本が元気に21年を迎える。よかった、よかった。【加藤裕一】(ニッカンスポーツ・コム/ゴルフコラム「ピッチマーク」)

ピンゴルフ新製品発表会に出席した鈴木愛
ピンゴルフ新製品発表会に出席した鈴木愛