<元賞金女王・村口史子の目>

前年大会優勝の渋野さんが予選落ちしました。

グリーンを狙うショットの距離感が第1日から気になっていましたが、第2日はさらに悪かった気がします。ダブルボギーにした7番のアプローチは、ライがひどくボールの下をくぐったんでしょうが“空振り”は…。最終18番で、返しの3メートルのパーパットがショートしたのは本当に悔しかったでしょう。

全部がうまくいかない感じでした。

本人は以前からアイアンに不安があったと言います。推測ですが、ほとんどのティーショットでドライバーを握ったのは、そのあたりにも理由があるんじゃないでしょうか。例えば、ポットバンカーに入れた18番の第1打もドライバー。リンクスの特性を考えたら、バンカーに届かないクラブで刻む選択もあるのに、刻まなかった。アイアンの不安→長い距離を残したくない→だからドライバー。そんな思考が、コースマネジメントの幅を狭めていたのかもしれません。

渋野さんは確かにパワーがつきました。ドライバーなどのシャフトを替えたのも、そのためでしょうが、一方でスイングが硬くなったようにも見えます。昨年は肩周りとか、もっと動きがスムーズだったと思います。心配なのは、スイングのリズムが狂うこと。また、アプローチ、パットなど柔らかさ、細やかなタッチが必要な動きのイメージが出にくくなってしまうことです。

こんなこと言っておいて矛盾しますが、本当は今の彼女に外野があれこれ言わないことこそ大事なんじゃないか、と思います。

まだ21歳。何と言ってもメジャーチャンピオンです。「5つのメジャーを全部勝つ」という大きな目標を掲げ、そのためにはもっともっと上を目指さなきゃいけない。だからこそ、パワーアップをはかり、コロナ自粛の間からスイング改造に踏み出した。全ては長期のスパンで見るべきもので、トレーニングやスイング改造が、半年やそこらで形になるわけがありません。

プロゴルファーは細かいことに悩むものです。例えば1ホールの中でも結果が出ないと「私、間違ってるのかな?」と思うことだってある。そんな姿を見ると、外野はみんな、何か言いたくなりますが、それも成長の過程だと、楽しみに見ることが大事なのかもしれません。

確かに私も不安を抱えながら彼女を見ていますが、同時に「まだまだ大丈夫」とも思っています。彼女のインタビューでの受け答え。どんな質問も受け止め、考えて、分析して、きちんと自分の言葉で対応する。素直さ、クレバーさに「すごいな」「いけるな」と感じます。

野村さんは腰の不調を乗り越え、優勝を狙える位置で予選を突破しました。私も賞金女王(99年)になった頃から腰痛に苦労しました。素振りをしても硬くなって、ほぐれなかったものです。なのに、風、寒さの強い今回のリンクスですばらしいパフォーマンスを見せています。風の影響を受けにくい、低い球を打つのがうまい。フィニッシュまでいかず、抑えて、腰のねじりが少ないスイングでコントロールを重視していることも、体の調子に合っているかもしれません。

上田さんはドライバーもアイアンも、リズムがすごくいい。気持ちのばたつきが見えない。34歳。米ツアーでも、リンクスでも戦ってきた経験が生きているんでしょう。(プロゴルファー、テレビ朝日解説者)