98年度生まれ「黄金世代」の吉本ひかる(23=マイナビ)が、世代12人目となるツアー初優勝へ、首位に浮上した。2位から出て4バーディー、ボギーなしの68と4つ伸ばして回り、通算10アンダー、134。岩井千怜と並んだ。19年に2度2位に入りながら、昨年から不振が続いていた。今春には新型コロナウイルスに感染した。最終日に首位から出るのは過去2度。「三度目の正直」を狙う。

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ゴルフ人生を象徴するような軌道だった。雨が強くなった17番パー3のグリーン上。吉本が放った12メートルのバーディーパットは、緩やかに弧を描いてカップに吸い込まれた。一直線にたどり着いたわけではない。雨に勢いを止められそうになり、コースを外れそうにもなった。それでも目標に到達。このバーディーで1打差に迫った岩井千が、18番をボギーとして並んだ。20年11月の伊藤園レディース以来、1年9カ月ぶりに最終日を首位で迎える。

10番パー4でも12メートルのバーディーパットを沈めるなど、勝負強さが光った。実は今大会は出場5度目で、今年が初の予選通過。「このコースは苦手意識が強くて、目標は予選通過だったので不思議。あまり実感がない」と、笑って話した。トップ10は昨年6月以来、1年2カ月も遠ざかっており、久々の優勝争いは「今の私はどれぐらいできるのか楽しみ」とまた笑った。

19年には2位に2度入るなどトップ10に8度、名を連ねてシード権も獲得した。畑岡奈紗や渋野日向子ら、同じ「黄金世代」の仲間に続き、次のツアー初優勝候補だった。だが昨年は6戦連続予選落ちなど不振に見舞われた。「すごい苦しかった。何をしてもうまくいかなかった」と、ドライバーが190ヤードしか飛ばないこともあった。今春には新型コロナウイルスに感染。元通りの感覚を取り戻せずに、前半戦は出場10戦で8度予選落ちと引きずった。

ただ「オフにしっかりとトレーニングできた。それが結び付いてきた」と、152センチの体がブレることが少なくなった。今大会で今季出場20戦で、直近の10戦は8度予選を通過した。今大会2日間のドライバー平均飛距離は231・25ヤード。好調だった19年の平均231・13を上回っている。

同世代の活躍も「同級生が頑張って、優勝すると率直にうれしい。いい刺激をもらっている」と笑った。初シードとして臨んだ20年には「優勝したい気持ちが強くなっている」と話していた。勝ちたい思いばかりが先走っていた以前とは違う。「自分のやれることを精いっぱいやりたい」。仲間の活躍を喜び、焦らずマイペースの今、吉本は強くなっている。【高田文太】

◇吉本(よしもと)ひかる

◆生まれ 1999年(平11)2月25日、滋賀県生まれ。

◆サイズ 152センチ、53キロ。

◆競技歴 9歳からゴルフを始める。滋賀短期大付属高卒業後、17年7月にプロテスト合格。同年に下部のステップアップ・ツアー、ルートインカップ上田丸子グランヴィリア・レディースで優勝。19年にレギュラーツアーで4359万211円を獲得し、賞金ランキング28位となり、初のシード権を獲得。生涯獲得賞金は前戦までで8623万7298円。

◆トップ10 19年4月に2戦連続で入った2位が最高成績。同年はトップ10に8度入った。他にトップ10入りは17、18、20年が各1度、21年が2度ある。

◆最終日首位スタート 過去に2度。最初は19年フジサンケイ・レディースで最終的に2位(優勝は申ジエ)。2度目は20年11月伊藤園レディースで最終的に8位(優勝は古江彩佳)。

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