山下美夢有(21=加賀電子)がツアー最終戦で勝みなみ(24)とのプレーオフ(PO)を制し、今季5勝目、通算6勝目を挙げた。首位スタートから70で通算15アンダー、273。PO1ホール目の18番パー4でバーディー、歓喜の涙を流した。日本人初の平均ストローク70未満、年間獲得賞金は史上最高2億3502万967円などを達成。身長150センチの21歳には記録ずくめのシーズンとなった。

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イメージ通りだ。プレーオフの18番パー4。バーディーパットは8メートルの下りフックラインをなぞってカップに消えた。こん身のガッツポーズ。山下が泣いた。

「うれしかった。結構な数を担いでもらったキャディーさんと強い気持ちで頑張って…。一緒につかんだ優勝と思って」

国内メジャーのサロンパスカップ、尊敬する宮里藍の冠がついたサントリー・レディース。過去2勝をともにした松村卓キャディー。今大会前、年間女王を決めていた自分に「この大会まで頑張ろな。まだ終わってへんで」と言ってくれた相棒への感謝があった。

勝に猛追された。15番で3パットした時、18番グリーン方向からの大歓声で並ばれたと感じ、初のプレーオフで緊張した。それを乗り越え、同じ新世紀世代の西郷に並ぶ今季最多の5勝目。年間賞金はイ・ボミを抜いて新記録。そして何より日本人初の平均ストローク70未満も達成した。

山下にゴルフを教えた父勝臣さんは言う。「スコアを伸ばすんは毎日2個ずつでええ。真っすぐ打って、グリーンに乗せて、パットも時々入るでしょ? それが平均ストロークにつながるんやと思います」-。飛距離アップのためのジム通いは「飛ばしたいなんて思ったら、ろくなことがない」と絶対に許さない。無理をしない。目の前のできることをきっちりやる。それが山下のゴルフだ

プレーオフで、山下は「マネジメントを一番に考えた」。423ヤードもあり、第2打は打ち上げ、グリーンの傾斜もきつい。「気持ちはバーディー狙いやけど、簡単にとれるホールじゃない。まず第2打でピン上につけたいと思った」。バーディーパットを外してもパーパットは上りが残る。決めやすい-。そんな思いで残り167ヤード、6番アイアンの第2打をピン上8メートルへ。正規のラウンドで、さらに上のカラーからほぼ同じラインを打った。

同組のイ・ミニョンが同じ8メートルから、同じラインを打っていた。父に教わったゴルフが余裕を生み、流れを呼び込み、決勝のバーディーにつながった。

優勝スピーチにウソはない。「こうして強くなれたのは、本当にみなさんのおかげです。人間性も技術も成長できるように頑張ります」-。パターヘッドに刻んだ言葉がある。

「Family is everything」。

ギャラリー、キャディー、両親、弟、妹、マネジャー。みんな家族だ。シード選手で最も小さい150センチの体に周囲の思いを詰め込んで、山下は今季1番強い選手になった。【加藤裕一】

<山下の記録>

▼日本人初の平均ストローク70未満 69・9714(33試合、108ラウンド)で、19年申ジエの69・9399(27試合、86R)に次ぐ史上2位。

▼年間獲得賞金史上最多 2億3502万967円で、15年イ・ボミの2億3049万7057円を更新。

▼国内メジャー年間2勝以上 20年の原英莉花(日本女子オープン、リコーカップ)以来16人目(日本勢11人目)。申ジエだけ18年に年間3勝(サロンパス杯、日本女子プロ、リコー杯)している。

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