ルーキーの神谷そら(フリー)が、大会最年少となる20歳5日でツアー初優勝を飾った。

首位から出て、1イーグル、2バーディー、6ボギーの73とスコアを落とし、通算4アンダーの209。難コースと重圧で後半にトップを譲る展開も、勝負強さで逃げ切った。昨年11月のプロテストにトップ合格した有望株。18日に20歳の誕生日を迎えたばかりの新人が、41回の伝統を持つ大会を制した。

   ◇   ◇   ◇

2打リードで迎えた最終18番のグリーン上は緊張感に包まれた。神谷の5メートルのパーパットはわずかに右にそれた。残る70センチのパットを外せば、4人によるプレーオフに突入-。神谷は緊張から手が震えていることに気づいた。「震えの止め方は知らないので、リズムよく打つことだけを考えた」。勝利のボギーパットを決めると、ファンの歓声に申し訳なさそうに頭を下げた。

重圧がルーキーにのしかかった。前日まで計4つだったボギーがこの日は6つ。一時はトップを譲る場面もあった。終盤の17番パー3が勝負の分かれ目となった。崖の上にグリーンが設置された難関で、第1打を7番アイアンで3メートルにつけ、強気のパットで沈めた。競り合う選手たちがスコアを落とす中、突き放す貴重なバーディー。「届かないかと思ったティーショットが届いてくれた。パターも少し強く入ってしまったけれど、ぎりぎりカップに吸い込まれてくれた」と紙一重の一打を振り返った。

21年のプロテストは不合格だった。一発で通った同学年の選手たちを素直に応援できない自分がいたと打ち明ける。ジュニア時代から戦ってきた川崎春花や尾関彩美悠が昨年9月に次々にツアー優勝。悔しさはあったが、「自分も同じような位置にいれているのかな」と自分もそこまで行ける気持ちになった。2度目の挑戦となった昨年11月のプロテストではトップ合格を果たした。

今季はQT(クオリファイング・トーナメント)ランキング7位で出場。ドライバーの平均飛距離は約256ヤードで、ここまで2位につける。パワフルで、ピンを果敢に狙う攻めのゴルフが身上だったが、4度の予選落ちで持ち味が影を潜めた。復調のきっかけは2週前からキャディーを務める照井浩二氏。3月に吉本ひかるの初優勝を支えたベテランの「自信を持って」という助言で自分を取り戻した。ツアー参戦8試合目で優勝を手にした神谷は「こんなに早く勝てるとは」。伝統ある今大会で20歳5日の最年少優勝者にもなった。5日前に誕生日を迎えたばかりのルーキーが、とっておきの美酒に酔いしれた。【奥岡幹浩】

○…後半に1度は単独首位に立った安田だが、最終盤に連続ボギーをたたいて初優勝を逃した。前年も優勝争いを繰り広げながら後半に失速。それだけに「去年もそうだけれど、17番と18番で、昨日と今日で4打も落としてしまった。せめて半分にしておけば優勝もできていたのかなと思う」。悔し涙が止まらなかった。

○…新人では荒川も1打差2位と奮闘。最終18番にこの日唯一喫したボギーが響いて優勝には一歩及ばなかった。「悔しいのは悔しいけれど、やることはやった。プレーに対して悔しいという思いはあまりない」。同期の神谷の優勝については「すごいなと思うし、自分もやってやろうと、いい刺激になった」。次こそ主役になる。

<神谷そら・アラカルト>

◆生まれ 2003年(平15)4月18日。

◆出身地 岐阜県土岐市。

◆出身校 岐阜・麗沢瑞浪高。

◆ゴルフ歴 父に勧められて6歳から始める。

◆飛ばし屋 ティーショットの平均飛距離256・23ヤードは今季ツアー参戦選手中2位(23日現在)。ジュニア時代にはゴルフスクールで大人相手にドライバー勝負を挑み続けて腕を磨く。

◆目標の選手 宮里藍、テレサ・ルー

◆好きな音楽 K-POP。アイドルグループBTSの大ファンで「試合がある日の朝は絶対にBTSの曲を聴いている」。

◆好きな食べ物 フルーツ。「果物は全部好き」。

◆サイズ 167センチ、60キロ。

◆血液型 AB。