山下美夢有(22=加賀電子)が“チーム山下”の絆で2年連続年間女王に就いた。首位から出て4バーディー、2ボギーの70で回り、通算10アンダー278。今季5勝目、ツアー通算11勝目を大会連覇で飾った。

2年連続年間女王は史上8人目で最年少での達成。2年連続で獲得賞金が2億円超えしたのも史上初。記録ずくめの女王は来季、海外メジャーとパリ五輪制覇にロックオンした。

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偉業を遂げ思うのは、家族への感謝だった。「一番は家族の支え。いろいろ話をしたし、おいしいご飯が食べられて切り替えることができた」。

3番、5番をボギーとし、3打差で出た高橋に並ばれたが女王は慌てなかった。相棒の松村卓キャディーから「鼻歌でも歌え」と言われリラックス。「(パー5の)9番で取れたら良い」と気持ちを切り替え、有言実行とばかりに、8番、9番と連続バーディーで巻き返した。高橋がボギーとした13、16番できっちりバーディーを奪い、18番のウイニングパットを沈めて笑顔。「今年は優勝を決めるパットを何回か外していたので、しっかり決めて終わりたかった」。こぶしを交わした松村キャディーが涙したのと対照的だった。

終わってみれば3打差をつける快勝。連覇で史上8人目の2年連続年間女王を最年少でつかみ取った。

昨季5勝。今季も前半戦だけで4勝。“山下時代”の到来を感じさせたが、夏場の海外メジャー挑戦で流れが変わった。ドローヒッターの山下にとって海外のコースは「寄せられないところが多い」。プレースタイルや考えが微妙に変わり、持ち味の精密機械バリのショットに乱れが生じた。8月のCATレディースを体調不良で棄権。体調も崩した。後半戦はうまくかみ合わず未勝利だった。

しかし、山下は立ち直った。家族と過ごす時間で「いつも笑っていられた」。スイングの迷いも「プラスにならないと感じた。すぐに止めて前の自分に戻した。初心に返ってやりました」。夏場に頻繁に変えていたパターも「Family is everything」と刻まれた昨年優勝時のパターに戻し、最終戦で強さを見せつけた。

2年連続の女王、平均ストローク60台と偉業を達成し、次なる目標は「今年はメジャーで良い成績ができなかったんで、しっかり準備して優勝争いを」。パリ五輪にも「日本代表選手として出たい。記念に残る大会」と意欲を見せる。家族との強い絆で結ばれた山下が来年も女子ゴルフ界をリードする。【阪口孝志】

◆山下の主な記録(88年のツアー制度施行後) 2年連続年間女王は史上8人目(※ツアー制度施行前の樋口久子、と阿玉を含む)。22歳116日での達成は、11年に2年連続女王となったアン・ソンジュの24歳81日を抜いて最年少記録となる。今季獲得賞金は2億1355万4215円。コロナ禍で統合され、52試合が行われた20-21年を除けば、2億円を超えたのは15年のイ・ボミと22年の山下のみ。2年連続の2億円超えは史上初となる。

○…最後まで年間女王争いを繰り広げた申ジエが山下をたたえた。第1日、第2日を同組で回り「ショットの安定感を見ていたので、逆転は難しいと思っていました」。それでも、13番でイーグルを奪うなど「周りのギャラリーの前で良いショットを見せられたので良かった」と最後まで盛り上げた。「世界ランキングも上がってきたし、人生で1度くらい五輪に行きたい」と来年の目標を定めた。

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