金星を挙げた南アフリカ戦では決勝トライをアシストするなど、ラグビー日本代表のNO8アマナキ・レレイ・マフィ(25=NTTコミュニケーションズ)は不可欠な存在となった。トンガ出身のホープを輩出したのは、全国的にはまったく無名の花園大(京都市)。そこには不思議な運命があった。

 10年春、トンガから私立の花園大に勧誘を受けて入学した。「だまされた…」。目に飛び込んできたのは縦65メートル、横50メートルという試合用フィールドの半分にも満たない、狭い土のグラウンド。ゴールポストは白い塗料がはがれた木製だった。

 入学前の面接で「花園大は強いですか?」と聞いた。その時、通訳を務めた米国人教師は「強い!」と説明。だがチームは関西学生Bリーグ(2部)。部員数も1部校の約3分の1にあたる30人前後。ナイター設備もなかった。

 マフィは16人きょうだいの15番目。ラグビーでの成功が家族のためになると考え、へこたれなかった。江森隆史監督(44)は「トップリーグで、プロで、やりたいと言っていた。半年で日本語も上達して頭のいい子だった」。来日時に95キロだった体は筋トレですぐに110キロを超えた。口癖は「練習も試合も100%」。

 だが当時、2部では関係者の目に届かなかった。転機は大学3年の5月、1、2部混合のエキシビションマッチ。「オレは絶対に負けない」と大暴れ。トップリーグ入りをつかみ、日本代表へ駆け上がった。

 花園大の川勝主一郎総監督(83)は「見る人は見ている。マフィには何か超えようという姿勢がある」。指導者や仲間に恵まれたマフィは、日本代表入りの際に「花園大に感謝したい」と語った。5年前に「だまされた…」という言葉も今では笑い話になった。【益田一弘】