壮絶な増量が、五輪への道につながった。女子75キロ級で、渡利璃穏(わたり・りお、24=アイシンAW)が優勝。昨年のアジア大会63キロ級金メダリストが2階級上の最重量級に挑戦し、女子で唯一五輪代表の決まっていなかった同級の候補に滑り込んだ。6月の全日本選抜63キロ級で敗れて1度は諦めた五輪だが、決意の階級変更で名前通りの「リオ」へ名乗りを上げた。

 残り10秒、4-5から渡利の鋭いタックルが工藤に決まった。そのまま強引に投げて2点。6-5で逆転勝利すると、右拳を突き上げた。インタビューは涙でかすんだ。「いろいろな方に世話に…、応援してもらい…、優勝することができました…」と、途切れがちに声を絞り出した。

 75キロ級への挑戦を決意したのは9月中旬だった。世界選手権代表の飯島が出場枠をとれず、この大会での一発勝負になった。「75キロ級で狙ってみろ」という栄和人監督の言葉に、当初は戸惑った。「75キロなんて無理。そんなに簡単に増やせないと思った」と話す。

 「コーチや家族に相談して決めた」後が、大変だった。1日5食をノルマに、食べる量は倍になった。太りだすと体が重く、動きが遅くなった。それでも、練習をすると元に戻り、なかなか増えない。「69キロを前に止まった」。食べ物を見るだけで苦しくなり、吐き気にも襲われた。

 それでも続けられたのは「五輪に出たい気持ちがあったから」。璃穏の名前は「穏やかに育ってほしいと付けられた」というが、リオデジャネイロ五輪が決まってからは「名前と同じ五輪に出たい」と思うようになった。予選に挑戦する権利を得て「五輪を自分のものにしたい」と言った。

 五輪代表になるには、来年3月のアジア予選で2位以内に入る必要がある。前日計量は69・3キロでクリアしたが「もっと体を大きくして、世界で勝ちたい。リオでは金メダルを目指したい」と話した。鏡の中の自分を見て「女心としては、ちょっとショック」と笑いながらも、璃穏はリオだけを見据える。【荻島弘一】