栃木ブレックスが川崎ブレイブサンダースを85-79で破り、Bリーグの初代王者に輝いた。一進一退の攻防が続いた終盤、主将の田臥勇太(36)がダメ押しのシュートをアシスト。1年を通して強力なキャプテンシーでチームを引っ張り、プロ元年の歴史的Vに導いた。最優秀選手(MVP)には21得点を挙げた古川孝敏(29)が選ばれた。

 優勝が決まると、田臥は仲間1人1人を次々に抱きしめた。会場の8割近くを黄色で染めた栃木ファンの大歓声と祝福の拍手が、コートの選手たちに降り注ぐ。仲間たちの中心でNBAと同じティファニー製の優勝トロフィーを高々と持ち上げた。

 田臥にとっても、Bリーグ元年の優勝は格別の思いがある。「Bリーグになって注目していただける中で、今まで以上にプロ意識、自覚をあらためて思わせてくれた。初代王者を目指し全員で戦ってきた」と感慨深げに話した。

 要所で得点、アシストを決め、試合をコントロールした。終了残り1分、82-79から川崎を突き放すギブスの得点をアシスト。その直前、パスミスで得点機会をフイにした川崎の司令塔・篠山とは好対照だった。敗れた篠山を「田臥さんにまだまだ甘いと言われたような試合。ゲームコントロールの部分での落ち着きがすごい」と脱帽させた。

 10年前、日本リーグで唯一のプロチームとして生まれた栃木。実業団のように資金もなく、地域に密着することで積み上げてきたからこそ、優勝に意味がある。そこでプロ意識をチームに植え付けてきたのが、日本人初のNBAプレーヤー田臥だ。練習での厳しさ、肉体のケアやバスケットシューズを履くことに15分もかけるという準備。そんな男の背中を見てチームは成長した。

 チャンピオンシップ(CS)は、準々決勝で全日本総合で敗れた千葉に勝利。準決勝では、2年前にプレーオフで敗れた三河に勝ち、決勝では昨季のプレーオフ準決勝で苦杯をなめた川崎にリベンジ。いずれも逆転勝ちだった。そんなチームを支えたのが、この日も会場を埋めた熱烈なファン。Bリーグ元年に地域密着で1番の人気チームといわれる栃木が優勝した意義は大きい。「Bリーグは可能性を秘めたリーグになる。自分たちもそんなリーグにしていきたい」。田臥は、来季以降も栃木を、そしてBリーグを引っ張っていく。【桝田朗】

 ◆田臥勇太(たぶせ・ゆうた)1980年(昭55)10月5日、横浜市生まれ。秋田・能代工高では3年連続で総体、国体、高校選抜を制覇。02年にトヨタ自動車に加入。04年9月にNBAサンズと契約し、4試合出場。08年に国内に復帰し栃木に加入。173センチ、75キロ。