20年東京五輪に向け、日本セーリング界に遅咲きの新星が誕生だ。女子RSX級で、大西富士子(33=ホマレ電池)が銀メダルを獲得。同種目では五輪、世界選手権、W杯を通じて史上初の日本女子のメダルとなった。前日まで計6レースを終えて首位で上位10艇による最終レースに進んだが、3位となり逆転された。今大会はW杯として初の日本開催となる。

 わずか1秒ほどの差だった。大西の目の前で金を争っていた香港の選手が先にゴール。逆転された。「最後の最後で逆転された。悔しい」。ただ、RSX級日本女子初のメダルに「地元でのメダル。色は銀だが、やっぱりうれしい」と笑顔に変わった。

 欧州遠征1大会で約50万円の経費がかかる競技を8年ものアルバイト生活で続行した苦労人だ。桜美林大で競技を始めたが、卒業後「100社以上を回った」就活はすべてダメ。ウインドサーフィン・ショップなどのバイトで食いつないだ。

 14年12月に日本オリンピック委員会の就職支援「アスナビ」で、現在の所属先が決まった。「心配なく遠征ができた」。4~6月の欧州遠征で腕を磨き、この日の初メダルにつなげた。名前の富士子は母ヨシ子さんが「富士山の頂点に立つような人になってほしい」とつけた。その頂点は「メダルを取りたい」東京五輪で達成する。

 ◆RSX級 ボードにセール(帆)を立てて走るウインドサーフィンの種目の1つ。同競技には、速度とカービングを楽しむスラローム、宙返りなどパフォーマンスを競うフリースタイルなどがあるが、RSX級は全選手が共通規格のボード、セールなどを使用し、順位を競う。最高時速は60~70キロになるという。五輪は北京大会から採用された。

 ◆大西富士子(おおにし・ふじこ)1983年(昭58)12月25日、千葉県印旛郡生まれ。桜美林大3年でRSX級のインカレ制覇。4年でナショナルチームに初選出。17年世界選手権は34位。練習拠点は神奈川・材木座。姉つかさ、妹ユメ花の3姉妹。161センチ、55キロ。