卓球で2020年東京五輪(オリンピック)金メダル獲得を狙う張本智和(14=エリートアカデミー)が、同じ宮城県仙台市出身で五輪金メダリスト羽生結弦(23=ANA)への、尊敬の念を口にした。今年1月の全日本選手権シングルスで日本男子卓球界のエース水谷隼(28)に勝って史上最年少優勝。5月の世界選手権団体戦スウェーデン大会(ハルムスタッド)では、五輪と並ぶ国際大会で初の頂点をつかむつもりだ。また、ファンでもあるプロ野球楽天の注目選手に藤平尚真投手(19)の名前を挙げ、共闘も誓った。

 張本は向上心と、野心に満ちている。平昌(ピョンチャン)五輪フィギュアスケートで同じ仙台市出身の羽生が連覇したことにも、大きな刺激を受けていた。

 張本 本当にすごい。みんなに(ケガでの長期離脱で)金メダルは無理ではないかと言われていても、ちゃんと1位になってみせた。自分も東京五輪までに何があるか分からないけれど、羽生選手みたいなメンタルがあれば大丈夫だと思う。それを身につけたい。

 ジュニア時代から国内外で数々の史上最年少記録を塗り替えてきた。昨年6月には長年エースに君臨してきた水谷を世界選手権で初撃破。同8月にはワールドツアー・チェコオープンで男女通じた史上最年少優勝。今年1月の全日本選手権でも水谷に勝利して最年少更新。それでも、慢心はみじんもない。地元・仙台への愛着を持って言及した。

 張本 羽生選手や、プロ球団の楽天イーグルス、ベガルタ仙台など、すごい人やチームに比べたら、自分なんかまだまだだ。五輪や世界選手権で金メダルをとって、初めて仲間に入ることができる。今年は世界選手権団体戦があるので、絶対に金メダルをとりたい。

 先月のチームW杯英国大会(ロンドン)では、丹羽、大島、上田との日本代表でエース役を担った。だが、またしても中国の厚い壁にはね返されて準優勝に終わった。

 張本 全日本では勝ったけれど、水谷さんを超えたなんて思っていない。チームW杯でもエース使いをしていただいても2点とれなかった。世界選手権団体戦では、水谷さんと日本代表として同じチームでプレーできることも心強いです。自分が水谷さんより多くポイントをとれるようにしたい。2人とも全勝できるようにしたい。

 3日のジャパン・トップ12大会決勝では、水谷にリベンジされた。長所のチキータ(攻撃的なバックハンドレシーブ)を封じる策を研究された。さらに成長できるヒントをもらったとも捉えている。2人での切磋琢磨(せっさたくま)は水谷も望むところ。現状分析ができる能力も張本の強みだ。

 練習、試合漬けの日々で、気持ちをリフレッシュさせてくれるのがテレビでのスポーツ観戦だ。携帯での試合速報チェックも欠かさない。通学した仙台・東宮城野小や、練習拠点だった仙台ジュニアの張本卓球場は、楽天生命パーク宮城の1キロ圏内。昨年9月に始球式も行った楽天の、エースへの期待を抱く選手もいる。

 張本 藤平投手に期待しています。岸さん、則本さん、美馬さんに続く4本目の柱になってほしい。10勝以上すれば1位は間違いない。横浜高校の頃から、ストレートの伸びがすごいと思っていた。投げる姿も格好良い。始球式の時に少しだけお話しさせていただいたこともあるんです。楽天の活躍を見て自分も頑張りたい。

 張本、羽生に、プロチームも加えた祝賀イベント開催は、宮城県民の夢の1つ。張本にとっても、まだまだ夢への序章。今日6日開幕のワールドツアー・カタールオープン(ドーハ)から、世界のエースとなる階段を再び上り始める。【取材・構成=鎌田直秀】

 ◆張本智和(はりもと・ともかず)2003年(平15)6月27日、仙台市生まれ。2歳から競技を始め、全日本選手権では小1から世代別6連覇。16年12月世界ジュニアで史上最年少優勝。昨年6月世界選手権で史上最年少ベスト8。同8月のチェコ・オープンでは、男女通じワールドツアー最年少優勝。今年1月には全日本選手権最年少V。世界ランク最高位は11位。家族は元選手でコーチの父宇さん、95年世界選手権中国代表の母凌さん、妹美和さん(9)。14年春に国籍を変更し、張姓から張本姓へ。172センチ、62キロ。血液型O。気迫の声は「チョレイ」。