女子の池江璃花子(17=ルネサンス亀戸)が、4冠&4種目日本新を有言実行した。100メートル自由形で53秒03、50メートルバタフライで25秒43と日本新を追加。今大会は第1日から最終日まで4種目6度の日本記録をマークした。仲がいいフィギュアスケート樋口新葉(17)が見守る中で圧倒的な力を発揮。国内敵なしの17歳は、次の目標に8月のジャカルタ・アジア大会での「アジア王者」を掲げた。

 「璃花子!」の呼び声に、池江は客席を見上げた。樋口が手を振る姿を見て、表彰式でもらった人形をぽーんと投げた。キャッチした樋口を見て、笑った。

 3456人満員のスタンド、初観戦の樋口。「ここで出したら格好いいだろうな」。最初の100メートル自由形は前半で力をためて後半に爆発。0秒43短縮の53秒03、昨夏の世界選手権7位相当の好記録だ。「予想以上のタイムでうれし泣きです」と目をうるませて、それを見ていた樋口も涙。最後の50メートルバタフライは「呼吸をしたら遅くなる」と同種目で封印していたノーブレスを解禁。0秒01上回って25秒43。「4種目で日本新を出したい」という言葉を有言実行。初の日本新を出した中3のころ、ご褒美はLINE(ライン)スタンプ1個=50円だった。高3になり「さすがにLINEスタンプとはいかないから、洋服やアクセサリーかな」と母美由紀さんも笑って、目を細めている。

 今年1月にはオーストラリア短期合宿。海外チームに飛び込んだ。練習で先頭を泳ぐことを指示され、言葉も分からない中で、必死で泳いだ。そこで気がついた。「日本人は練習は強いけど、海外勢は本番で強い。試合で爆発的な力を出すには自信を持つこと」。帰国後に、テレビの中で平昌五輪(ピョンチャンオリンピック)スピードスケート小平奈緒が金を獲得。「1対1で戦う競技。プレッシャーもあると思う。そこで勝てる。強い」と心に残った。

 自信をつけるには練習しかない。筋力をつけて、高地合宿で長い距離を泳いだ。「今、全部を終えてうれしい気持ちでいっぱい。次は世界大会で自己ベストを出すこと。アジア大会でアジアチャンピオンになれるように」。今夏のアジアをステップに、世界へと羽ばたくことを誓った。【益田一弘】