世界28位の錦織圭(28=日清食品)が、大会10度目の挑戦で自身初のベスト8入りだ。同138位で予選勝者のエルネスツ・ガルビス(ラトビア)に4-6、7-6、7-6、6-1の3時間29分で勝ち、日本男子では95年松岡修造以来23年ぶり戦後2人目の8強入りで、4大大会全てで8強入りは日本男子で初めて。今日11日(日本時間同午後9時開始)の準々決勝で元世界王者のジョコビッチ(セルビア)とセンターコート第1試合で対戦する。

 もがき苦しんだ10年分に比べれば、209分の激闘は短かったかもしれない。錦織は、ようやくテニスの聖地で、自分に勝った。苦手な芝、折れそうになる心。のしかかる重圧。「1つの壁だった。今まで、なかなか破れなかった」。勝利の瞬間、何度も右手でガッツポーズを繰り出した。

 自分との闘いだった。元世界10位だが、十分に勝てる絶好機。4大大会のうち、ただ1つだけ欠けていたウィンブルドンの8強。それが目の前にある重圧で「苦しかった。落ち着いてプレーしようとした」。右上腕部に疲れからか痛みを感じた。試合中にマッサージを受け、痛み止めの錠剤をのんだ。何とか、のしかかる緊張をふりほどいた。

 3回戦と違い、相手の強烈なサーブにてこずった。3回戦のキリオスの最高時速は約216キロ。ガルビスのは211キロと約5キロ遅かった。しかし、「彼特有の打ち方で、全く(コースが)読めなかった」。第1セットは、相手のサーブで22ポイント中、2ポイントしか奪えなかった。

 第3セットは、壮絶なタイブレークとなった。「どうしても取りたかった」。錦織がたたみかけ、5-2とリードした時、相手が転倒し、左膝を痛めた。相手はコートから去り、治療時間で約7分の間が空いた。「正直、あそこで(治療時間を)取るのかと思った」。

 動揺した。5-2から5オールに追いつかれた。その後は、互いに神経戦だった。ミスを恐れ打ち切れないラリー戦が続き、錦織に4本、相手に2本のセットポイントが行き来した。最後は勇気を振り絞り前に出た。相手はパスをネット。勝敗はほぼ決した。

 次戦は、過去2勝13敗のジョコビッチだ。しかし、錦織にもう失うものは何もない。芝では初対戦で「新しい戦い。優勝するにはタフな戦いが続く」と頂点への意識も示した。勝てば、日本男子85年ぶりの4強入り。すべてをジョコビッチ戦にぶつける。【吉松忠弘】

 ◆WOWOW放送予定 11日午後8時55分から。12日午前1時から。ともにWOWOWライブ。男子シングルス準々決勝ほか。生放送。