【シンガポール20日=吉松忠弘】秘策で初出場の弱みを克服だ。女子テニスの年間成績上位選手で争うWTAファイナルは21日、当地で開幕する。全米オープン優勝で初出場する世界4位の大坂なおみ(21=日清食品)は、今大会の“止まる“コートの特性を早々に入手。大会前に都内の味の素ナショナルトレーニングセンター(NTC)で対策を練った。万全の状態で22日(日本時間午後8時30分開始)の初戦、同8位のスティーブンス(米国)戦を迎える。

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本番の会場で、大坂は、約1時間強の練習をバイン・コーチと、日本テニス協会のナショナルチーム女子担当の吉川真司コーチと行った。その後、吉川コーチが「コートは球が引っかかる。バウンドしてから飛んでこない。その特性をNTCで練習してきた」と明かした。

事前に情報を入手できたのは、バイン・コーチが昨年、経験しているからだった。バイン・コーチは、大坂のコーチに就任する直前の昨年最終戦で、ウォズニアッキの練習相手として参加。コートの特性を熟知していた。その情報を今年、大坂に伝授し、早々と対策を練った。

大坂は、6日に中国オープン準決勝で敗れた後、香港に移動。香港オープンを欠場したがイベントをこなし、その後日本に戻った。「練習に集中して、ホテルから出ずにルームサービスばかり」と、NTCで今大会だけに絞って練習した。足を動かし、早く球の位置に入り、自らのパワーをぶつける。飛んでこない球に受け身にならず、自分から踏み込んで打つ練習を繰り返し、徹底的に体に覚えさせた。その成果が出たのか、この日の練習でも吉川コーチのサーブにリターンエースを連発した。

大坂自身は「コートは(球足が)速い」と、止まるのとは逆に感じている。ただ、それは吉川コーチによると使用球が軽いのが理由だという。室内のハードコートで試合をしたのは9月の東レが最後。その時の使用球より軽いので、そのように感じているのだという。

練習前には、大会事前会見に臨み「全米以降、部屋でゲームしてないの」と、大好きなテレビゲームも封印していることを明かした。初戦のスティーブンスとは過去0勝1敗。ただ「対戦したことを忘れていた」とダメージはない。「とても興奮している」と、すでに対策は万全だ。

◆今大会のハードコート 室内のハードコートは組み立て式で、木の板を何枚も組み合わせ、その上を樹脂でコーティングして使用する。表面塗装のざらつきなどで、球足の速さが決まる。今大会は、全米などで使用されるデコターフ社製。東レ・パンパシフィックの室内コートはグリーンセット社製だった。

◆試合方式と賞金 8人の選手を4人ずつ2組に分け、各組で総当たり戦を行う。各組の上位2人、計4人が準決勝に進出。トーナメント方式で優勝を争う。賞金は1次リーグでは勝敗に関係なく、出場料として1試合で11万ドル(約1210万円)、2試合で13万ドル(約1430万円)、3試合で15万1000ドル(約1660万円)が確約されている。また、1勝につき15万3000ドル(約1680万円)が上乗せされ、もし全勝優勝すれば賞金は236万ドル(約2億6000万円)となる。