世界9位の錦織圭(28=日清食品)が、同8位のドミニク・ティエム(オーストリア)に1-6、4-6のストレート負け。通算1勝2敗で、1次リーグB組最下位となり、準決勝進出はならなかった。しかし、右手首のケガから復帰した年に、39位にまで落とした世界ランクをトップ10に戻し、年末上位8人に出場資格のある最終戦にまで出場できた復活の年でもあった。

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調子が上がらない両者の戦いは、ティエムが球に回転を多くかけ、ネットより高い弾道でミスを減らしたのに対し、錦織は最後までリズムをつかめなかった。最後こそ、うまく終われなかったが、今年1年を振り返れば、言うことはない見事な復活劇だった。

同じくけがから復帰し、世界1位に返り咲いたジョコビッチがいなければ、間違いなく錦織がツアーのカムバック賞を受賞していたに違いない。自分も90年末に右肩を脱臼。7~8カ月、離脱した経験がある。戻ったときの感覚は雲の上のようなフワフワ状態。全くプレーにならなかった。

それを考えれば、復帰後、2大会目で、ツアー下部大会とはいえ優勝。3カ月後には、マスターズ大会で決勝進出は、通常の選手ではあり得ない。そして、ウィンブルドン8強に全米4強。間違いなく完全復活した年だった。

いつでも4大大会に優勝できるチャンスはある。トップは強いが、来年以降は、1年で絶対的な調子を維持できる選手が減っていく傾向にある。完全復活した錦織が悲願の優勝を遂げる日は遠くない。(元デビス杯代表・辻野隆三)