レジェンド門下生が初Vだ。平昌五輪(ピョンチャン・オリンピック)代表の小林陵侑(22=土屋ホーム)が138・5メートルの142・0点でW杯初勝利を飾った。強風の影響で競技開始が遅れ、1回目で順位が決まった。日本男子のW杯優勝は昨季の開幕戦を制した兄潤志郎(27=雪印メグミルク)以来で14人目。所属先の選手兼監督、葛西紀明(46)の指導の下、入社4年目で初めて頂点に立った。
小林がW杯参戦4季目でうれしい初Vだ。強風のため予定から約1時間20分遅れて試合は始まった。めまぐるしく風が変化する状況でK点を大きく越える138・5メートルをマーク。飛距離自体は4番目だが、有利な向かい風による減点が少なく142・0点でトップに立った。遅延のため1回目の成績だけで争われ、そのまま優勝が決まった。「1本だったにせよ、優勝は優勝なのでうれしい」と喜びをかみしめた。
確固たる自信があった。オフは主にアプローチ(助走路)でのスピードアップに着手。功を奏したようで「言っちゃったらみんな強くなる」と具体的な修正点は明かさないほどだった。好調で飛距離が出たため、着地の衝撃が積み重なり左膝を痛めた。本格的なシーズン前に約2週間、治療に専念。秋の国内戦は「出場すれば優勝できる」という言葉通り、復帰した3日のUHB杯からキッチリ2連勝。ビスワ(ポーランド)でのW杯個人開幕戦は初の表彰台となる3位に入り勢いに乗った。
「涙が出るほどうれしい」と、所属先の選手兼監督のレジェンド葛西を感激させた。土屋ホームに入社して4年目。17年1月には、女子で2学年上の伊藤有希(24)がW杯の初勝利を飾った。先輩たちの活躍を肌で感じ、厳しいトレーニングを一緒にこなしながら自分の番を待っていた。今秋の国内戦で成績が振るわなかった葛西からは「俺が元気ないから頼むぞ」。より気合を入れてシーズンに臨んだ。
昨季個人総合優勝で平昌五輪ラージヒル覇者のカミル・ストッフ(ポーランド)を2位に抑えての価値ある勝利。W杯個人戦40試合目での達成は兄潤志郎よりも23試合早かった。平昌五輪ではノーマルヒル7位、ラージヒル10位とともに日本勢で最高順位だった。「成長してきたなと思う。(シーズン)10勝を目指したい」。次世代のエースになるべく、1勝では満足しない。【西塚祐司】
◆小林陵侑(こばやし・りょうゆう)1996年(平8)11月8日、岩手県八幡平市生まれ。5歳で兄潤志郎の影響でスキーを始める。松尾中3年の全国中学で複合、ジャンプの2冠。盛岡中央高3年の国体少年複合は連覇、同ジャンプ2位。初出場した平昌五輪では個人NH7位、LH10位。174センチ、家族は両親と兄、姉、弟。174センチ、59キロ。
◆冬季競技で活躍の主なきょうだい スキーでは、ジャンプで弟幸生が札幌五輪70メートル級金メダルの笠谷昌生・幸生のほか、複合で95年世界選手権団体Vメンバーだった荻原健司・次晴、現役の渡部暁斗・善斗の兄弟がいる。スピードスケートでは、高木菜那・美帆姉妹が平昌五輪で冬季史上初のきょうだい金メダルを獲得。ほか、フィギュアスケートの浅田舞・真央姉妹、スノーボードの成田童夢・今井メロ・成田緑夢の3きょうだい、カーリング女子のロコソラーレ吉田知那美・夕梨花姉妹がいる。