世界1位の大坂なおみ(21=日清食品)が、左腹筋痛のためにシングルス準決勝を棄権した。26日の準々決勝は大逆転で同25位のドナ・ベキッチ(クロアチア)を下し、赤土のツアー大会で初の4強入りを果たした。本人も手応えをつかんでいたが、思わぬアクシデントに見舞われた。次戦5月のマドリード・オープンには出場する意向を示した。

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準決勝開始の約3時間半前に大坂の棄権が発表された。世界ランク15位のコンタベイト(エストニア)と対戦するはずだったが、無念のリタイアだ。

準々決勝は女王の底力を見せつけた。バウンドしてからの球足が遅いクレーコートで、一発では決まらない。敗戦まで残り2点と追い込まれても、1点ずつ地道に返すことで、大坂は大逆転につなげた。マッチポイントを決めた瞬間、「カモーン!」と雄たけびを上げた。

大坂は、もうお手上げ状態だった。ただ、考えていたのは「後悔しないで、この大会を去ること」だけだったという。気持ちは完全に切れていた。しかし、逆にそれが幸いした。力みが取れ、強打ではなく返球することだけに集中。相手がミスをし始めた。

第1セットを奪いながら、第2セットはミスを誘われた。相手が山なりの緩い球でリズムを変えてきた。打ち急ぐ大坂はミスを連発。「あっという間に最終セットの1-5となってしまった」と追い込まれた。

不可解なのは、2回戦で見せたクレー仕様のスタイルでプレーしなかったことだ。球に縦回転をかけ、ネット上の高いところを通し、深く入れる。これができたために、2回戦で難敵を破った。しかし、この日はいつもの強打で挑み苦戦を強いられた。

ただ、「クレーで、逆転できたのは大きな自信になる」という。決して得意ではないコートでも、戦い方では勝利につながることを学んだ。「パニックにならないようにした」。あわてずに、どんな形でも最後まで返球すれば、何かが起きることがある。それがクレーだ。