今回の全仏では、世界7位の錦織圭(29=日清食品)の勝ち進み方に焦点が当てられた。3回戦で4時間26分、4回戦で2日がかりの3時間55分。ともにフルセットを戦ったことで、体力が底をつき準々決勝で力尽きた。

錦織の5セット試合が非常に多く、4大大会で上位に進出した時に、総ゲーム数が少なく1試合平均時間も短いという事実は、数字上は示せなかった。ただ、5セット試合で体力を消耗するという事実は、錦織だけでなく他の選手にも当てはまる。

では、どうすれば5セット試合を減らすことができるのか。錦織が5セット試合を避けるための具体的な対策を、3点ほど考えてみた。もちろん、だからといって、必ず5セット試合が減るとは限らない。外野のたわ言かもしれない。ただ、今にでもできる3点セットだ。

(1)第1セットから90%で飛ばす

錦織の戦い方は、最初、手探りの様子見から始まる。数字では示せないが、感覚としては60%ほどの力で試合を始めると見る。それは、その試合の流れや、その後の体力温存のために、小柄な錦織が身につけた戦法だろう。

以前、錦織がよく使った言葉に「しばく」というのがある。フォアを軸に、100%の力で打ち抜き、それを続けるということだ。「しばく」ほどではなくとも、90%ほどの「しばく」で入れば、最初の2セットは大きくリードできるかもしれない。今の錦織なら、そこから体力が枯渇するとも思えない。

60%の力で入り、セットダウンともなれば、そこから力を上げざるを得ない。心理的にも重圧を受ける。まずは最初の2セットにある程度の力を傾ける。そうすれば、悪くても4セットでしのげることが多くなるのではないか。

(2)最初のトスで勝った時はサーブを選ぶ

18年に、一時、取り組んでいた。リターンが得意な錦織は、トスに勝つと必ずリターンを選ぶ。まだ試合に入り切れていないところで、相手のサービスゲームを最初に破ろうという考えからだ。

しかし相手にキープされ、第2ゲームの自分の最初のサービスゲームを落とすと、一気に0-3となる確率が高い。トスで勝ってサーブを選べば、もし最初の自分のサービスゲームを落としても0-2でとどまる可能性は高い。

また、リターンを選んでサービスキープが続くと、4-5で自分のサービスゲームとなる。そのゲームを落とせば、即、セットを落とすことにつながる。サーブを選べば、5-4で、最初に王手をかけられる。追う形と先行する形では、心理的には大きな違いだ。

(3)年間の日程を考え直す

12年以降、錦織が、年間マスターズ大会8大会すべてでプレーできたのは13年の1回しかない。必ず、どこかの大会を欠場している。しかし、それでもトップ10をキープし、世界4位にまで上り詰めた。

マスターズ大会は、本戦に入った選手は出場の義務を負い、欠場すると0点が世界ランクの点に加算される。しかし、例外規定の1つに、実働で総試合数が600を超えた選手は、1大会だけ義務を減らせるというのがある。

錦織は、昨年、600試合を超えたため、19年のマスターズ大会は7大会に出場すればいい。来年から、それを利用する手はある。1大会出場しなくても、例年、どこかの大会を欠場しているため、それほどのマイナスにはならないだろう。1大会減るだけで、負担は大きく違うのではないだろうか。14年全米準優勝の快進撃は、右足親指の腫れ物もあり、直前に1カ月弱、試合に出ずに挑んだ大会だった。