【鄭州(中国)=三須一紀】4大会連続の五輪シングルス出場を目指した水谷隼(30=木下グループ)が、東京オリンピック(五輪)代表権を逃した。世界ランキング14位の水谷は同6位のヒューゴ・カルデラノ(23=ブラジル)に1-4で敗戦。16年リオデジャネイロ五輪で日本人初となるシングルスメダリストになるなど日本卓球界をけん引してきた男が、自国開催のシングルスの舞台に立てない。丹羽孝希(25=スヴェンソン)が1月発表の同ランキングで水谷を375点上回り、日本人2位以内が確定。同種目代表入りが確実となった。

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リオ五輪16強で下して以来の対戦だったカルデラノに、力負けした。ラリーを得意とする水谷が、中陣からの打ち合いで、圧倒された。1ゲームを返した後の第4ゲーム。4-3から8連続失点で逆転され、そのまま勢いを失った。

3年半前とはほど遠い。「自分がとにかく衰えている。試合をやってて『こんなのをミスるんだ』とか思う。どうしても過去の良かった自分と比べ、自分が自分じゃないみたい」。

水谷を苦しめたのはボールが見えにくいという目の状態だった。コートを取り囲むLED看板や、観客席が暗転する中、卓球台だけに当たる強い光が影響し、2年前から思うようにボールを視認することができなくなった。今もそれは変わらない。

その影響から選手として重要な闘争心も失われた。「勝利への執念。そういうものが昔に比べて欠如している。アスリートとして身を引くタイミングなのかな…」と力なく言った。

「今までになく卓球を嫌いになった。卓球をしている時が何よりもつらかった。9割方、目が理由。半年ぐらい休みたい」と選考レースを終え、弱音ばかりが口をついた。

しかし、水谷は世界ランキングで日本人3位。団体戦要員の3人目に選ばれる可能性は高い。東京五輪で新種目となる混合ダブルスでは、伊藤美誠とのコンビが調子良く、金メダルも狙える位置にいる。

「闘争心を取り戻さないと絶対に五輪でいいプレーができない。いろんなベテラン選手に意見を聞こうと思う。何とか選ばれたら、このまま終わりたくない」

1年間の死闘を終えズタボロになった心だが、東京五輪へ向け、モチベーションを取り戻そうと必死でもがくつもりだ。

◆卓球日本代表の五輪選考方法と世界ランキングの決め方 男女ともに20年1月発表の世界ランキング上位2人がシングルス代表権を獲得する。団体戦要員の3人目は日本卓球協会の強化本部が推薦する。来年1月6日に男女それぞれ3人の東京五輪代表を発表する。