ショートプログラム(SP)首位の坂本花織(20)が他を圧倒する2連覇で、世界選手権(3月、ストックホルム)に弾みをつけた。フリーも1位の149・33点を記録し、合計227・78点。2位川畑和愛(東京)に25・42点差をつけ、4位三原舞依(21)とのコンビで都道府県別でも兵庫を優勝に導いた。2年ぶり出場となる世界選手権では、完成度の高い演技で前回5位の悔しさをぶつける。

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最終滑走の緊張がほどけ、坂本が胸に手を当てた。2季目のフリー「マトリックス」。序盤は得点源とするフリップ-トーループの連続3回転で、出来栄え点(GOE)が減点となった。それでも崩れず、以降のジャンプ5つは全て加点付き。3つのスピンとステップで最高のレベル4をそろえ「前半はだいぶヒヤッとしたけれど、後半はいつも通りに大きく跳べた。“プラマイゼロ”かなと思います」と笑顔で振り返った。

地元兵庫の優勝にこだわった。年明け、同門の三原に「出よう」と勧誘。気心知れた友は調整に苦しんでいたが「2人なら乗り越えられる」と考えた。トップ選手がそろわないことも多い国体だが、坂本は昨年も4大陸選手権(ソウル)1週前に出場。都道府県別4位からの優勝を「むちゃくちゃうれしい」と喜んだ。

18年平昌五輪6位など実績を積み上げても、根は変わらない。新型コロナウイルスの影響で、昨夏の振り付けはリモート。フランス人のリショー氏の指導を画面越しに受けた。自宅近くの公園に行き、蚊に刺されながら踊った。中野園子コーチからは「周りの人に『坂本花織だ』と言われようが、どこででも踊れる。普通の子であり続けられるのがいいこと」と評される。

地道に1歩ずつ進み、次は世界選手権。初出場の19年はSP2位発進だったが、フリー5位で表彰台を逃した。「2年ぶりのフリーでパーフェクトな演技をしたい」。自信を糧とし、総仕上げに入る。【松本航】