19年W杯ニュージーランド(NZ)代表主将で、トヨタ自動車のNO8キーラン・リード(35)が現役引退を表明した。

NZ代表「オールブラックス」で127キャップ。13年には世界年間最優秀選手に輝き、11、15年のW杯連覇、19年の代表主将と輝かしい実績を積んできた。

トヨタ自動車在籍は2シーズンだった。同じFW第3列でフル出場したフランカー古川聖人(24)の言葉が、その価値を物語った。

「リードが引退するっていうことは、自分として本当にさびしいです。本当はまだ日本にいてほしいし、まだ一緒にラグビーをしたい。『最後を優勝で終わらせてあげたい』という気持ちは本当に強かったです。結果として、できなかったのは、本当に悔しいです」

東福岡高から立命大を経て、19年に加入。1年目のシーズン、W杯日本大会を終えたリードが合流した。

「リードとはリーダーグループで同じでした。自分が小さい頃から見ていた、憧れの選手。オールブラックスで120キャップ以上を持っている主将です。リーダーシップの取り方を、たくさん教わりました。どういう風に、どういう口調で、いつ話すのか…。本当にうまい。言葉の壁があっても、スッと入ってくる、伝え方をしてくれる」

高校、大学と主将を経験してきた古川にとっては、間近で見るリードの振る舞い全てが学びになった。

「リードは人として、プレーヤーとして尊敬できる。昨季は(新型コロナウイルスの影響で)シーズン途中で終わって深く関われなかったけれど、今季はシーズン前から過ごせました。ラグビー以外のところはコロナの関係であまり時間を(一緒に)過ごせなかったけれど、リードとラグビーを通して、本当の意味で、いい仲間になれました」

準決勝2日前の記者会見。リードはコミュニケーションの大切さを口にした。

「いかに効率的に、正しい時間帯、正しいタイミングで伝えることができるかに尽きる。時と場合によっては、ディテールを詰めないといけないときもあるし、厳しいメッセージを伝える時もある。チームの空気を読んで、どう正しいことを伝えるのか。状況は毎回変わる。状況にふさわしいメッセージを伝えていく」

今季は19年W杯日本代表のSH茂野海人(30)と共同主将を務めた。W杯で試合出場がなかったが、茂野は21年度の日本代表候補に名を連ねる。30代に差し掛かり、周囲を引っ張る立場となる茂野はかみしめた。

「リードはチームに向けての話し方がうまい。チームにどうやったら伝わるかを、ちゃんと考えて話している」

リードがメディアを通じて現役引退を明かしたのは、パナソニック戦後だった。振り返れば2日前の記者会見で、こう言っていた。

「共同主将を任せられる、任せられないにかかわらず、私のリードシップは変わらない。ラグビーの現役が終わったとしても、ラグビー業界、ビジネスにリーダーシップを生かせられればと思っている。経験は自分の糧となり、現役生活を終えても、何かにつながっていくと思います」

オールブラックスは15日夜、公式ツイッターに「Thank you,Reado.」とつづった。添えられた写真は背番号8の後ろ姿。誇り高き黒のジャージーを着たリードだった。

193センチ、110キロ。その大きな背中が、世界中の憧れだった。【松本航】