日本テニス協会は、10月4日開幕予定だった男子テニスの世界ツアー公式戦の楽天ジャパンオープン(東京・有明テニスの森公園)と、9月13日から行われる予定だった女子テニスの世界ツアー公式戦、花キューピット・ジャパン女子オープン(広島広域公園コート)の開催中止を発表した。両大会ともに20年に続く2年連続での中止となった。

続いて、9月20日から予定されていた東レ・パシフィックの主催者も中止を発表。これで、国内で行われているテニスの世界ツアー公式戦すべてが2年連続で中止に追い込まれた。少しでも目の前で世界のテニスを見たいファンからは、他の競技が国際大会を開催できているのに、なぜテニスはできないのか、という不満が爆発している。

例えばサッカーだ。今季、日本代表は6度の国際試合を国内で開催している。対戦相手は韓国、モンゴルのアジアから、セルビアなど欧州の国もある。対戦国の選手やスタッフは無事に入国し、対戦し、離日していった。

現在、日本は細かい条件はあるにしても、“特段の事情”を除いて、外国籍の人の入国を基本、認めていない。スポーツの国際大会は、この“特段の事情”に当てはまる。そして特段の事情があっても、入国後は2週間の自主隔離が求められる。

その水際対策が、東京オリンピック(五輪)によって条件が緩和された。そのひとつに「入国翌日から3日間続けて陰性が確認されれば、試合が可能になる」というのがある。これを当てはめて、サッカーなどの国際試合は開催された。

入国翌日から3日の間もバブル方式なら、同じチーム内で練習は可能だという。ただ、同じチームという定義は、同じ飛行機に同乗するというのが条件らしい。サッカーなど団体球技で、1~2試合だけを行うなら、この方式で開催は可能だ。

しかし、これをテニスに当てはめようとすると不可能に近い。まず、条件緩和でも、入国翌日から3日間は試合はできない。例えば、日本開催大会の前週にどこかで決勝に進み、日曜に試合をして、その後、飛行機に飛び乗り日本に向かう。同日に日本に着いても、木曜まで試合は不可能だ。

隔離期間の3日間の練習もテニスの場合はハードルが高い。もし錦織圭がニューヨークから、コーチのチャンがロサンゼルスから飛んできて、日本で合流したとする。その2人は3日間、一緒に練習はできない。また、その3日間、他の選手との練習はできない。

大会で入国する選手、関係者を日本側が空港に迎えに行く義務もある。ただ、事務処理など手続きのため、2日前に予約が必要。テニスの場合、ツアーで転戦している選手はいつ負けるかは不明で、当日、翌日入りも珍しくない。

楽天ジャパンオープンの川廷尚弘大会ディレクターは、スポーツ庁を通じて厚労省と何度も開催への道を模索してきた。あるとき、担当者に来日する選手や関係者の人数を聞かれた。約300人と答えると「それは無理」とはっきり言われたという。

この条件をATPやWTAのツアー側に投げれば、100%開催の許可は下りない。大会開催の前後に日程的余裕があり、護送船団方式で、1つの飛行機に同乗して来日できる団体球技などしか、この方法では開催できない。

世界でも成熟した個人競技で、毎週、世界を転戦するモデルで、テニスは国際競技のメジャー化を実現してきた。しかし、そのシステムはコロナ禍において、全く日本の水際対策に当てはまらない。このままでは、日本からテニスの国際大会が消滅してしまいかねない危機を迎えている。【吉松忠弘】