東京五輪柔道女子70キロ級金メダルの新井千鶴(27=三井住友海上)が10日、オンライン会見を開き、現役引退を発表した。

黒のパンツ姿で登場した新井は「9月10日をもって現役引退を報告します。たくさんのサポートのおかげでこれまで現役を続けられました。応援してくださった皆さま、本当にありがとうございました」と感謝の気持ちを伝え、頭を下げた。

埼玉県寄居町出身。身長172センチで長い手足と体幹の強さを生かした内股などの多彩な足技を武器とし、正統派の柔道を貫いた。遅咲きの柔道家で、埼玉・児玉高3年時に全国大会に初出場。三井住友海上に入社後も鍛錬を重ね、着実に実力をつけて国内外の大会で活躍した。16年リオデジャネイロ五輪の代表選考では落選したが、17、18年世界選手権を制覇。3連覇を狙った19年世界選手権では3回戦敗退し、その後は苦しい時期が続いた。東京五輪ではタイマゾワ(ROC=ロシア・オリンピック委員会)との準決勝で、16分超の死闘を制すなどして初優勝を飾った。五輪後に「第2の人生を歩みたい」との思いが強くなり、引退を決断した。

「何1つ楽なことはなく、本当に険しい道のりが多かったですが、その分達成感を味わえました。自分を成長さえてくれたのが柔道です。どんなことにも諦めず、信念をぶらさずに歩んでいく大切さを学び、無駄な経験は1つもありませんでした。誰もができる経験ではないですし、得たものを次の人生で生かしていきたいです」

今後は会社で働きながら指導者を目指し、第2の人生を歩む。

会見に同席した、女子70キロ級で五輪2大会金メダルの上野雅恵監督(42)は「入社時から苦労を乗り越えて十分やったと思います。本当にご苦労さま」とねぎらいの言葉をかけた。