昨季のジュニア3冠女王で、今季シニア転向1年目の松生理乃(16=中京大中京高)が初優勝した。

ショートプログラム(SP)首位で迎えたフリーもトップの131・96点。合計201・44点をマークした。

冒頭、初成功を目指すトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)に挑戦。回転が足りずダウングレード判定となったが、両足では立った。今季の前2戦では転倒していた。全体としては、得点が1・1倍になる後半に3連続と2連続のジャンプ2本を集める構成で高得点をたたき出した。

「全体的に、もっとうまく滑れたと思うので悔しいです。モヤモヤした気持ちが残りました。(3回転半は)直前の6分間練習では回転不足でしたが立つことができたんですけど、本番ではうまくいかなくて…」

この日の3回転半はスピードを抑えぎみにして入ったが、回り切れなかった。「スピードも必要だと思うんですけど、勢いをつけすぎると、体が持っていかれてしまう。その間を取るのが難しいです」「しっかりと待ってから跳び上がらないといけないんですけど、力が入っていない状態でフワッと跳んでしまいました」と試行錯誤が続く。

山田満知子コーチからは「やらない方が良かった。中途半端なジャンプだった」と指導され、決意を新たにした。「しっかり跳ぶためには回数を跳ぶことが一番だと思っています。曲に入れる回数を増やしていきたい」と教訓を口にした。

その上で、来月2日のジャパン・オープン(さいたまスーパーアリーナ)や、初参戦で2試合にエントリーしているグランプリ(GP)シリーズでも3回転半に挑む覚悟を決めている。「跳べるようになって、曲に入れていかないと世界では戦っていけない。早く習得して、どの試合でも跳べるようにしたい」と思い描く近未来を語った。

「月光」は「樋口美穂子先生が探してきてくださいました」と提案してくれたという。同コーチが振り付けを手掛けた同プログラムは宇野昌磨が有名。松生も「初めて曲を聴いた時は、宇野昌磨選手が思い浮かびました」と打ち明ける。「昌磨選手は1つ1つの動きに重みがあって感情移入できる。あまり強弱を感じられない曲。どう飽きられずに滑るか難しい曲なので、その重い動きを理想として目指したい」。3回転半の習得だけでなく、得意の表現力と安定感にも磨きをかける。18年平昌オリンピック(五輪)男子の銀メダリストも手本に、自身は夢の22年北京五輪へ1歩ずつ進む。【木下淳】